岩瀬昇のエネルギー通信 (63)

論争終止符「カスピ海は『海』」と認めるロシア・イランの思惑

執筆者:岩瀬昇 2018年8月10日
エリア: ヨーロッパ 中東
カスピ海上にあるロシアの油田施設(C)AFP=時事

 

 筆者がテヘランに勤務していた1990年代後半、イランは盛んに「カスピ海『湖』論」を唱えていた。ソ連時代には「湖」ということで合意していたのだが、ソ連が崩壊し、カスピ海沿岸に新たに誕生したアゼルバイジャン、カザフスタンおよびトルクメニスタンが「海」論を主張していたからだ。

「海」と「湖」とで、何がどう違うのか?

「海」については国際海洋条約が存在しており、主権の及ぶ領海や排他的経済水域などが細かく規定されている。一方「湖」の場合は、国際的な協定は一切なく、関係当事国が話し合いで決める慣習になっている。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top