医療崩壊 (58)

オミクロン株でも無意味な鎖国:日本感染症医療「120年の思考停止」(上)

執筆者:上昌広 2022年2月1日
新規入国を原則として禁止している日本は異例の存在(全国知事会長の平井伸治鳥取県知事[画面左]らとテレビ会議で意見交換する岸田文雄首相=1日午後、首相官邸) ⓒ時事
オミクロン株感染拡大にピークアウトが見える中、世界の新型コロナウイルス対策は規制解除に舵を切った。その中で異例の厳戒態勢を敷く日本。ワクチン追加接種が遅れた以上は必要な措置とも言えようが、厚生労働省がデルタ株の大流行後も“強い意志を持って”検査を抑制していたことが見逃せない。

 日本のオミクロン株対策が迷走している。広い地域にまん延防止等重点措置を発令し、「鎖国」を続ける日本は異色の存在だ。本稿では、日本の新型コロナウイルス対策の根本的な問題点を解説したい。

少ない日本の感染者数、世界全体ではピークアウト

 まずは日本の感染者数だ。図1は、英オックスフォード大学が提供するデータベース「Our World in Data」を用いて、筆者が分析したものだ。1月28日現在の日本の人口100万人あたりの感染者数は502人(1週間平均)で、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、6番目に少ない。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
上昌広(かみまさひろ) 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。
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