池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
今年の10月以降頻発していた、イスラエルのエルサレムの旧市街(東エルサレム)近辺での刃物による襲撃がまた起こった。Two Israelis die following Jerusalem stabbing attack, BBC, 23 December 2015.12月23日、2人のパレスチナ人がエルサレムで刃物を用いて襲撃を行い、イ…
「イスラーム国」の中東での活動、および中東域外での関連した活動に国際政治が振り回された1年だった。軍事専門誌IHSジェーンズのウェブサイトでは、この1年での「イスラーム国」のイラクとシリアでの支配領域の拡大と縮小を分かりやすく図示して示している。Islamic State…
ロシアのプーチン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は12月22日、電話会談を行い、中東での対テロ作戦での協調で合意した、と報じられている。これは3日前の出来事を思い返すと意味深い。Lebanese militant leader killed in Israeli raid in Syria: Hezbollah, Reuters, De…
米連邦議会下院は12月8日、ビザ免除プログラムの適用を厳格化する法案を賛成407、反対19の圧倒的多数で可決した。民主・共和両党の圧倒的支持を受けているため、近く上院でも可決されることが確実だ。"House passes visa waiver reform bill with strong bipartisan support,…
シリア内戦へのロシアの軍事介入は、冷戦期以来最大規模の中東での軍事バランスの変化をもたらしつつある。中でも重要なのはロシアの空軍戦力と防空能力のシリアへの導入である。9月30日のロシアのシリア空爆開始に備えてロシアは一気に軍事施設をシリア西北部に設立したが、1…
シリア内戦をめぐっては、米・露が11月14日のウィーンでの関係国会議で接近を図っている一方で、トルコがロシアと爆撃機撃墜をめぐって表面上は激しく角突き合わせる。サウジが反政府派の一致を図る会合をリヤードで開いたり、米国に接近するシリアのクルド勢力が、現地の少数…
12月2日に米カリフォルニア州サンバーナーディーノ(サンベルナルディーノ:現地報道では、英語圏といえども元来の語源のスペイン語に近い発音をしているようなので、より現地の発音に近い転写を追記しておく)の障害者施設で起きた、14人を殺害した銃乱射事件も、「イスラー…
ドイツの諜報機関である連邦情報局(BND)が、サウジの体制の先行きへの不安を表明する異例の声明を12月2日に公表した。"German spy agency warns of Saudi shift to 'impulsive' policies," Reuters, December 2, 2015.この報道によれば、BNDの声明では、サウジの対外政策が…
この記事は記録しておきたい。ペルシア湾岸産油国の情勢に気を配っている人であれば、このニュースは目にしただろう。そして、「さもありなん」「前から言われていたことではあるけれども」と思いつつ、「この時期に報じられたのはなぜだろう」と考えるだろう。"Emirates Secr…
「ワリード・ジュンブラート」と聞いて「ああ、レバノンの面白い人ね」と分かる人は中東に明るい人。"Politics and lolcats: Lebanon"s 'Stand-up' former warlord rulez Twitter," Al-Araby al-Jadeed, 27 November 2015.その彼が個人のツイッター・アカウントで珍妙なツイー…
パリの同時テロについて、しばしば「組織性」が論じられる。しかし私はこれには慎重である。というのは、「イスラーム国」そのものへのリクルートにしても、「イスラーム国」に共鳴しその活動の一部であると主張されるテロを決行する集団へのリクルートにしても、通常の意味で…
米オバマ政権はトルコのロシア軍機撃墜の影響を極力小さく抑えたい姿勢が明確である。また、パリの同時多発テロ事件による対シリア軍事作戦への影響も避けたいようである。24日のオランド大統領との会談の後の1時間に及ぶ記者会見で、フランスとの連帯を謳い上げたものの、対…
24日に、チュニジアの首都チュニス中心部で、大統領護衛隊の隊員を輸送するバスに対して複数の自爆テロが行われ、かなりの死者が出ている。死者の数は当初6名という情報がチュニジア内務省から出ていたが、 大統領府からは死者11名という情報も流れている(アル=ジャジーラ…
シリア北部からの情報が錯綜している。シリア北部のトルクメン人勢力が撃墜機のロシア人パイロット2名を捉えて殺害したと語ったことが報じられていたが、トルコ政府筋はロイター通信にパイロット2名が生きているとする見解を示した。トルコの反政府勢力が米国から供与された…
ロシア機撃墜事件によって、その背後にあるトルクメン人問題が、欧米メディアでも無視できない問題となり(トルコはこの問題に以前から注目を促してきたが)、BBCも急遽「シリアのトルクメン人とは何か?」という解説をウェブサイトに掲載している。ただでさえ複雑なシリアの…
トルコによるロシア軍機の撃墜がシリアをめぐる国際政治に及ぼしうる影響をいくつか考えてみると次のようになる。(1)トルコが支援するトルクメン人の保護の問題が顕在化し、ロシア・アサド政権との間の紛糾が続くとともに、米国が同盟するクルド人勢力がトルクメン人と競合…
トルコによるシリア国境地帯でのロシア軍機撃墜に対して、プーチン大統領は領空侵犯の責任を認めず、「背中から刺された」「『イスラーム国』のテロの共犯」「深刻な結果をもたらす」と激しいレトリックで迎え撃った模様である。もっともこのような時に弱気の発言をできるはず…
シリア問題にまた別の角度の捻りが入り、急速に展開している。シリア北西部のトルコとの国境付近を飛行していたロシア軍の爆撃機をトルコが撃墜した。トルコ軍はロシア軍機が繰り返し領空侵犯をして警告を受けたと主張しており、レーダーの航跡を公開している(ロシアはとりあ…
サウジアラビアのリヤードで、来月の12月15日に、シリア反体制派の「穏健派」を招集するという案が浮上している。サウジ資本のアラビア語衛星放送アル・アラビーヤが報じたことにより、注目されている。"Meeting scheduled to unite Syria opposition in Saudi," al-Arabiya, …
「イスラーム国」を名乗る組織のテロに憤るアメリカ国民はいっそうの対策を求めるが、同時に地上軍の派遣には反対している。これがおおよその世論だろう。議論は極論に触れがちだが、オバマ大統領もこの世論動向を踏まえて政策を決めているのだろう。"Exclusive: After Paris,…
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