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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

ロシアはアルメニアへの「南下政策」でトルコを圧迫

ロシアがアルメニアへの軍事的なテコ入れを相次いで誇示して、トルコへの圧迫を強めている。ロシアは2月18日、アルメニアへの防空システムなど2億ドル相当の武器売却取引の詳細を発表した。2月20日にはアルメニアの首都近郊でトルコに近いエレブニ(Erebuni)空軍基地に5基…
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アンカラの自爆テロ犯の「謎」は誰もが少しずつ嘘をついているシリア問題の典型

アンカラの自爆テロで犯人について、エルドアン大統領やダウトール首相が事件後すぐに主張したシリア国籍のクルド人による犯行説と、PKK分派のTAKや、最近のトルコ治安当局高官のリークが示す、トルコ国籍のクルド人による犯行説が、真っ向から食い違っている。これによってト…
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アンカラの自爆犯はトルコ国籍とDNA判定 シリア北部への軍事介入論の根拠弱まる

2月17日のアンカラのテロで、実行犯はトルコ国籍であることがDNA判定により分かった、とトルコの「治安当局高官」が明かしたと報じられている。"DNA report suggests Ankara bomber was Turkish: security official," Reuters, February 23, 2016.これが事実か、あるいは事実…
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イタリアの検察によるエルドアン大統領子息への捜査着手は西欧の不満の表明か

よりによってこのような時期に、というべきかあるいはむしろこのような時期だからこそ意図的にと読み取るべきか、受け止め方次第のニュースである。イタリア・ボローニャの検察官が、トルコのエルドアン大統領の子息ビラール・エルドアン氏に対する汚職の告発を受理し、捜査に…
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トルコのクルド人武装勢力の分派が犯行声明、エルドアン政権の説明と矛盾も

2月17日のアンカラでの自動車爆弾テロに関して、トルコのクルド系反政府武装勢力「クルディスターンの自由の隼(TAK)」がホームページ上で犯行声明を出した模様だ。TAKはトルコのクルド系反政府武装勢力の最有力であるPKKの分派とされ、最近の別のテロでも犯行声明を出して…
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欧州諸国のトルコへの懐疑は難民問題へのプランB策定を急がせる

EUの首脳会議がブリュッセルで2月18・19日にかけて開かれているが、英国のEU残留の条件と並んで、重要なテーマが難民問題への対処であり、特に、トルコに頼れなくなった時の代替策の策定が急務として浮上している。昨年は難民大規模流入が、並行して生じたテロと共に、EU政治…
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トルコはアンカラのテロをシリアのクルド人勢力と断定

トルコは17日のアンカラの軍兵員輸送車を標的にした自動車爆弾テロへの、シリアのクルド人武装組織YPGによる関与を断定した。18日にダウトール首相は、YPGが トルコの反政府武装組織PKKと直接共謀して自爆攻撃を行ったと発表し、エルドアン大統領も同様の主張を行った。トルコ…
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ロシアはトルコを次の「ウクライナ」にするのか

シリア北部で、ロシアの空爆に支援されてアサド政権が巻き返すだけでなく、クルド人勢力YPGが北東部から伸張してアレッポ北部アアザーズに迫ることで、トルコの出方が注目されるとともに、それに対するロシアの反応が気になる。トルコが一貫して主張し続けてきたシリア北部へ…
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アンカラの自動車爆弾テロはトルコのシリア軍事介入を加速するのか

2月17日の午後にトルコの首都アンカラで、軍の兵員輸送車両を狙った自動車爆弾が爆発し、少なくとも28名が死亡した。テロの実行主体は明らかになっていないが、クルド人の自治・独立を目指すPKK(クルディスターン労働者党)がまず疑われる。「イスラーム国」を名乗る勢力のテ…
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中東の次の内戦はトルコ南東部で起こるのか?

シリア内戦をめぐって、サウジやイラン、米国やロシアを含む地域大国・超大国の交渉が続く。しかし世界の関心をよそに、別のところで内戦の危険性が高まっているのかもしれない。中東で今現在問題になっている内戦といえば、多くはアラブ諸国の独裁的あるいは不安定・崩壊した…
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ロシアはアサド大統領個人の退任をカードとするのか

ジュネーブで1月31日にシリア和平会議が開催に漕ぎ着けそうな雲行きだが、アサド大統領の地位、反体制派のうち交渉に参加を許される(そもそも参加の意思がある)勢力はどれか、どの勢力の誰が反体制派を代表するかで、立場が様々であり、交渉は難航が予想される。ロシアとイ…
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ジュネーブのシリア和平会議はほぼ1週間遅れで開催に漕ぎ付ける見通し

シリア内戦の終結を目指す和平会議がジュネーブで1月25日に開始されるはずだったが、繰り返し先延ばしにされてきた。そもそもどの勢力が参加を認められるかについて、アサド政権、サウジアラビア、トルコ、米国、ロシアなどの思惑が大きく食い違っていることが原因で、調停役…
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サウジ・サルマーン国王の息子ムハンマド副皇太子への直接譲位説

サウジのムハンマド副皇太子への権力集中がもたらす王族内や国内諸勢力からの反発への不安、その手腕と資質への疑念が、欧米メディアの報道において強調される中で、不安感を煽るような情報発信がサウジの在外反体制派によって行われている。高齢のサルマーン国王が生前に退位…
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サウジのムハンマド副皇太子が疑念の払拭を図る

年初に急激に高まったサウジ・イラン間の緊張は膠着状態に入った。この問題から波及して注目すべきなのは、欧米メディアに表象されるサウジ・イメージの変化である。従来なら、欧米メディア、特に米メディアではイランこそが疑わしい、信用ならない、危険な存在としてかなりの…
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イスタンブールのスルタンアフメット広場で自爆テロ

トルコのイスタンブール旧市街の中心地スルタンアフメット広場で、1月12日朝、大規模な爆発があり、少なくとも10人が死亡、15人が負傷した。トルコのダウトオール首相は「イスラーム国」に関連する勢力の犯行と断定している。クルトゥルムス副首相はシリア人による自爆として…
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米国はサウジとイランのどちらにつくのか

1月2日にサウジによるシーア派反体制指導者処刑の発表がなされてから、サウジ・イラン関係の緊張が高まり周辺国を巻き込んでいった1月4日までの間に、米国の姿が見えないのが気になる。米国務省は処刑の報に接して、人権擁護の観点からの疑義や、宗派紛争の惹起への懸念を…
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スーダンはいつの間にかサウジ陣営に鞍替え

サウジは1月3日にイランとの外交関係断絶を発表した。翌日に真っ先に追随したのが、属国と言っていいバーレーンである。また、サウジと緊密に連携するUAEも大使の召還措置を取った。これに続く国はあるのだろうか。一般的に、GCCの次にサウジと足並みを揃えることが多いのが…
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サウジのシーア派指導者処刑の目的は国内支持基盤の引き締め

サウジ政府によるシーア派反体制指導者ニムル師の処刑は、サウジ国内の宗派間紛争に根ざした反政府運動の弾圧という意味を持つ。しかしサウジにとって今回の大量処刑の最大の目的は、シーア派の反体制派の弾圧よりも、スンナ派でサウジの支配的イデオロギーであるワッハーブ主…
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サウジとイランの外交関係断絶と舌戦の加熱は何を意味するのか

サウジアラビアは1月2日に47名の囚人の死刑執行を発表した。その中に、東部州カティーフのアッワーミーヤを中心にした反政府運動の精神的な指導者となっていたニムル・バーキル・ニムル師が含まれていた。これに対してイランやイラクやレバノンで強硬な抗議行動が生じ、イラ…
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2015年のまとめ3:ロシアのアサド政権支援強化で反体制派が劣勢にーー「キティちゃんノート」のアッルーシュも死亡

12月25日、ロシアの空爆により、ダマスカスの東の郊外、東グータ地区で、反体制派の有力指導者ザハラーン・アッルーシュらが死亡した。2015年の最後の3ヶ月に進んだ、ロシアの軍事介入強化によるアサド政権の反転攻勢を象徴する出来事だ。Air strike kills top Syrian rebel l…
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