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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

トランプ政権で湾岸アラブ系航空会社の躍進に黄信号?

トランプ政権の誕生、そして選挙戦中のトランプの発言は多くが本気のものであり、大統領に就任して実行する意図があると認識されることで、各方面に及ぶ影響がいっそう深刻に受け止められている。過去15年ほどの間に一気に台頭した湾岸アラブ産油国系の航空会社の将来にも、ト…
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トランプ米大統領はトルコのシリア北部「安全地帯」を支持するのか?

就任したばかりのトランプ米大統領が、TPP離脱からメキシコとの国境への壁建設までの、選挙戦中の公約を現実化させる意図を示す大統領令に次々に署名しているが、今度はシリア内戦に関しても、選挙戦中に言及した「安全地帯」の設定を実行する意思を示している。1月25日に米AB…
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アスタナのシリア和平会議はロシアと中東地域大国の協調の場

ロシアとトルコの主導で昨年12月30日に結ばれた停戦合意で提唱されていた、カザフスタン・アスタナでのシリア和平会議が、1月23・24日に開かれた。24日に声明が発表されたが、これは内戦の当事者による声明ではない。ロシアやトルコはアサド政権や反政府勢力などそれぞれの支…
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米国のスーダンへの経済制裁緩和はオバマ政権のトランプ政権への「置き土産」?

ここのところ環紅海の安全保障環境の変化に着目してこの欄にも記しているが、関連した動きとして、米国の対スーダン経済制裁の緩和も注目すべき動きである。退任間際のオバマ大統領は、1月13日に対スーダン経済制裁の緩和措置を取った。米国はクリントン政権期の1997年11月に…
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エジプトは南方艦隊創設で紅海・バーブルマンデブ海峡に臨む

先ほどサウジのジブチへの軍事基地建設の方向性について記したが、エジプトも紅海・バーブルマンデブ海峡への安全保障上の存在感を示そうとしている。エジプトは1月5日、南方艦隊司令部を正式に発足させ、紅海岸のサファーガの拠点の開設を記念する式典を行ってスィースィー大…
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サウジもジブチに軍事基地建設へ

サウジアラビアとジブチとの間で、ジブチにサウジの軍事基地を建設する交渉に決着がつきそうだ。“Djibouti Finalising Deal for Saudi Arabian Military Base,” Financial Times, January 17, 2017.昨年の3月や12月にもサウジのジブチでの軍事基地建設については再三報道が…
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1年前と8年前と:新年の中東の紛争を『フォーサイト』連載で振り返る

イラク・バグダードでは2016年の大晦日には、自動車部品を多く扱うシナーク(al-Sinak)市場への連続自爆テロで28人が殺害され、年改まって2017年1月2日にはサドル・シティーの交差点の群衆を標的にした自爆テロで35名が殺害された。いずれもシーア派の多い場所を狙った「イス…
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シリア内戦の停戦はロシア・トルコとイランが主導

暮れの慌ただしい、しかしどこか手持ち無沙汰の時間帯に、2016年12月末の中東情勢をメモしておこう。12月半ばのシリア反体制派のアレッポ東部陥落/アサド政権による制圧以後のシリア内戦は、ロシア主導でトルコがこれに追随する展開になっている。オバマ政権が政権末期でレイ…
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年末年始の読書2:ISの情報戦と「ヴァーチャル・カリフ国」

連休の午後、あるいは年末年始の読書案内その2。今日紹介するのは、ワシントンDCの戦争研究所(Institute for the Study of War)が12月20日に発表した報告書。「イスラーム国」の情報戦についての調査。「イスラーム国」は元来がグローバル・ジハードの分散型の結集・拡散の…
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年末年始の読書1:「サイクス=ピコ協定から百年」の米シンクタンク報告書

気づけばあっという間に年末である。先日ゼミをやっていて時間が来たので「来週はこの課題・・・」などと告げて去ろうとしたら学生から「来週は帰省していますので・・・」と曖昧に指摘された。私自身は年末年始にやっと本当にやりたかった仕事をやろうとしているため、全く休…
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トルコは西欧との難民合意を延命させて交渉のカードを握り続ける

トルコと西欧が火花を散らしていた、難民合意でトルコが担う役務の代償として約束されたトルコ人のEUビザなし渡航の実施についての交渉は、なおも続くようだ。2016年3月18日に結ばれたトルコとEUの難民合意は、EUが掲げてきた人権理念の美名の「裏側」を曝け出すものであると…
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トルコ・イスタンブルで欧州・アジアをつなぐ地下トンネル開通・合弁相手は韓国企業

隣国ではシリア内戦とクルド人勢力の台頭、「イスラーム国」の猛威、国内ではクーデタ未遂、クルド分離派との抗争、そして相次ぐ各種のテロ・・・とトルコの内憂外患が著しいが、エルドアン政権の真骨頂である「開発土建政治」は着々と進んでいる。その目玉は広域イスタンブル…
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トルコの首都アンカラでロシア大使が射殺される

12月19日の午後7時ごろ、アンカラの中心部チャンカヤ区にある文化センターで、ロシアの駐トルコ大使のアンドレイ・カルロフ氏が銃撃され、死亡した。犯人も現場で射殺(あるいは"neutralize”)された模様。犯人は「アレッポを忘れるな!シリアを忘れるな!我々の兄弟が安全…
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ヨルダンの観光地カラク城で銃撃戦

12月18日、ヨルダンの著名な観光地カラク城付近で銃撃戦があり、犯行集団が一時カラク城に立て籠もった。少なくとも10人が死亡し、そのうち一人がカナダ人観光客であると確認されている。その他の死者の多くは警察官か犯行集団で、必ずしも観光客を直接狙った無差別テロとは言…
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マリの言語と民族構成について(福井慶則さんより)

マリのティンブクトゥ(トンブクトゥ)を舞台にした映画『Timbuktu(禁じられた歌声)』について、先日この欄で書いたところ(「マリ北部紛争を描いた映画『禁じられた歌声』が描くイスラーム世界のバベルの塔」2016年12月10日)、フェイスブック上でつながっている福井慶則さ…
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マリ北部紛争を描いた映画『禁じられた歌声』が描くイスラーム世界のバベルの塔

今日は、ある大学のゼミが企画して行っている映画祭で、企画の学生たちからの依頼を受けて、近年のイスラーム主義過激派のジハードにまつわる映画を見て、トークを行ってきた。 下調べや、実際に映画を見て読み取った内容をメモにしてあるのだが、トークでは時間も短かったた…
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フランスの大統領候補フィヨン元首相にとって植民地支配とは「文化を共有する」こと

2017年春に投票が予定されるフランスの大統領選挙に向けて、11月20日と27日に行われた右派政党「共和主義者」(旧「大衆運動連合」)の予備選では、フィヨン元首相が急激に台頭して圧勝した。社会党はオランド元大統領が不出馬を表明するほど不評である。現時点ではフィヨン元…
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イスラエルはシリア・ダマスカス近郊の空爆でロシア供与の対空ミサイル・システムを試す

11月29日に、イスラエルがシリアのダマスカス近郊、サブーラ(As'saboura, Al-Sabura)などを空爆したことが判明している。ターゲットはレバノンのシーア派民兵組織ヒズブッラーで、イスラエルにとって許容しがたい兵器を獲得したと見られたことから攻撃に踏み切ったとも言われ…
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世界の「壁」を中東から考える(6)エジプトのガザの壁は地下深く伸びる

今回はエジプトを見てみよう。エジプトの「壁」は、パレスチナ自治区ガザとの国境線付近に築かれている。特徴的なのはエジプト政府は、地上に高くそびえる壁を整備するより前にまず、地下に深く掘って壁を作ったことだ。地下に掘ると言っても堀ではなく、れっきとした壁である…
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南スーダン派遣の陸上自衛隊部隊への「駆けつけ警護」任務付与を英紙報道はあらぬ方向に誤解

この欄では英語圏の主要紙の報道を素材に、日本語の報道ではあまり得られない中東に関する情報や視点を示すことが多いが、もちろん、英語圏の主要紙は万能ではない。英語圏の報道は歴史的に勢力圏としてきた中東やアフリカには強いが、日本あるいは東アジアについての報道では…
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