アメリカを駆り立てるイラク攻撃の「必然性」

執筆者:中井良則 2002年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 北米

[ワシントン発]ブッシュ米大統領が「悪の枢軸」と名指しした三カ国のうち、軍事攻撃に踏み切る可能性が最も高いのはイラクだ。これから五月にかけて、(1)新設の国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)がイラク国内に入って大量破壊兵器の査察を行なうかどうか(2)九〇年から続く国連経済制裁の仕組みが変わるかどうか、をめぐる駆け引きと緊張が高まるだろう。ブッシュ政権は国連の査察再開を受け入れるようイラクにあらゆる圧力をかける。だが、ユニラテラリズム(一国中心主義)に徹するブッシュ政権にとって、国連は手持ちのカードのひとつにすぎない。国連ルートがうまく機能しないと見て取れば、独自のイラク攻撃を始める可能性もある。 ポスト9.11の米世界戦略にイラクが重要となる理由はふたつある。ひとつは同時多発テロ以前から、ブッシュ政権にとってイラクが最大の潜在標的だったことだ。同時テロ直後の九月十五日、政権幹部が大統領山荘キャンプ・デービッドに集まり、イラクをただちに攻撃するかどうか激論を交したのは有名だ。この時は「アフガン最優先・イラク攻撃先送り」で決着したが、幹部らが共有するのは湾岸戦争後遺症といってもいい。 ブッシュ大統領の父が最高司令官となって戦い勝利したはずの湾岸戦争。だが、サダム・フセイン大統領がいまも権力を握り続けることへの心理的な反発が出発点にある。チェイニー副大統領(当時国防長官)ら父親のブッシュ政権にいた「戦中派」にしてみれば、未完の戦争目的を完遂する好機が十一年後に訪れた。9.10の世界に戻って敵を探せば、イラクが目の前にいたわけだ。

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