中国社会の中核をなす「義」とはいかなる価値観か

執筆者:宮本雄二 2021年6月8日
エリア: アジア
どんな統治者も中国人の伝統的価値観を滅ぼすことはできなかった ©︎humphery/Shutterstock.com
多民族が同居し、飢饉で多数の死者を出してきた中国では、人々はインナーサークルを重視し他人も政府も信用しない。ただし、そのしたたかさがひとたび「義」により糾合されれば、権力の屋台骨はたちまち揺らぐ。共産党は新型コロナへの対応を誤り、まさにこの恐怖を垣間見た。

   前回は、私の理解する中国共産党と国民との関係について語り、中国政治における国民の持つ影響力の仕組みについて説明した。その「国民」が、またわれわれと違うのである。その国民と、国民が作り上げる社会のことを理解しないと、中国における党と国民との関係、党内におけるものの決まり方といったものの真相に近づくことはできない。共産党に統治されているとされる国民ないし人民とはどういう人たちなのであろうか。今回は少し踏み込んで解説してみよう。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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