“強権”金融庁に萎縮する金融業界

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2012年9月18日
エリア: 日本
金融庁が処分を連発する狙いとは(畑中龍太郎金融庁長官)(c)時事
金融庁が処分を連発する狙いとは(畑中龍太郎金融庁長官)(c)時事

 金融庁の強権ぶりに、監督される立場の銀行や証券会社などから怨嗟の声が上がっている。「事前指導から事後処分へ」という行政のあり方の転換を逆手にとるかのように行政処分を連発し、金融庁が「金融処分庁」と揶揄されるようになって久しい。だが、在任2年目に入った畑中龍太郎氏が長官になってから、その傾向がさらに顕著になっている。民間金融機関など監督対象をひれ伏せさせ、一挙手一投足まで縛ろうとする金融庁の狙いは何なのか。 「すべては、畑中長官の怒りが根底にある」  野村証券を傘下に持つ野村ホールディングス(HD)の幹部は小声で話す。  企業が増資する際の幹事会社を務めた野村証券が、事前にその情報を機関投資家などに漏らしていた「増資インサイダー」事件。野村HDは当初6月29日に、渡部賢一グループCEO(最高経営責任者)を半年間50%減俸にすることなどを柱とした社内処分を発表した。この時点では辞任を否定していた渡部氏だったが、1カ月後の7月26日に辞任を発表した。結局、トップのクビを差し出すことになった背景には、畑中金融庁長官の「強い意思」が働いていた、というのだ。  これは金融庁詰めの記者たちも証言している。畑中氏はもとより、長官の意を受けた幹部たちが「渡部のクビを取るまで許さない」と語っていたという。こうしたムードを感知したメディアが「野村の社内処分は甘い」というトーンの記事を書き続けたことも、渡部氏を辞任へと追い込んだ。  辞任を待っていたかのように7月31日に証券取引等監視委員会が「行政処分を求める勧告」を金融庁に出し、これを受けて8月3日に金融庁は「業務改善命令」の行政処分を行なった。  畑中氏は何に怒ったのだろうか。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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