80時間世界一周
80時間世界一周(25)

そこをアルカイダの「聖地」にしないために

竹田いさみ
執筆者:竹田いさみ 2006年9月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 米国ニューヨークのマンハッタン島からハドソン川を渡ると、対岸はニュージャージー州の港町ジャージーシティーだ。自動車を使うなら川底に掘られたホランドトンネルを通り抜ければよいし、列車やフェリーでも簡単に渡れる。朝夕のラッシュ時、マンハッタンのオフィス街に向かう通勤客が、一斉にハドソン川を渡るさまは圧巻だ。生涯ニューヨークを愛して止まなかった歌手、フランク・シナトラの生誕地として、ジャージーシティーに隣接するホーボーケンは、熱狂的なファンにとっての「聖地」と聞く。ハドソン川のほとりにフランク・シナトラ公園があるのもうなずける。 じつはジャージーシティーにはもうひとつの「聖地」があることをご存知だろうか。国際テロ組織アルカイダが、一九九二―九三年頃に米国攻撃の拠点をおいたアジト跡があるのだ。マンハッタン島のホランドトンネル入り口から車で三十分ほどで、ジャージーシティーのとある住宅街に到着する。ハドソン川を見下ろす二つの墓地を走り抜けると、一戸建ての住宅が整然と並ぶ住宅街が目に飛び込んでくる。住民の大半はカリブ海系やアフリカ系のブラックや、インドやパキスタンの出身者など、非白人の居住者で占められる。もともと低所得階層の中でも、立身出世した人々が住んでいるらしい。とても大都会ニューヨークに隣接しているとは思えない、閑静で、ゆったりとした時間が流れている町である。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ
竹田いさみ 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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