【ブックハンティング】日本人が書かなかった日本の「中絶と避妊」の歴史

執筆者:武部隆 2008年12月号
タグ: 日本
エリア: アジア

 少子高齢化による社会保障費の負担増に苦しんでいると、「ベビーブーム」という言葉に強い憧れを感じてしまう。元気な赤ん坊の泣き声が街に溢れれば、人も経済も活気づくような気がするからだ。 ところが、第二次大戦終結直後の一九四七年から始まった第一次ベビーブームは、日本の戦後復興のスピードを遅れさせる要因ともなった。第二次大戦によって国内では全家屋の二割が空襲で破壊され、四七年時点で四百万世帯が焼け跡でバラック生活を続けていた。そこに国外から大勢の引き揚げ者と復員兵が戻って来て、出生率は急激に上昇する。四七―四九年の三年間には八百万人もの子どもが生まれ、日々の食糧にさえ事欠いていた大人たちは、この先どうやって乳飲み子を養えばいいのか途方に暮れた。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
武部隆(たけべたかし) 1961年生れ。早稲田大学第一文学部卒。84年時事通信社に入社。金沢支局を経て本社内政部に。旧建設省、旧自治省、自民党、厚生労働省、総務省などを担当。公共事業、地方財政制度、社会保障政策などに詳しい。著書に『自閉症の子を持って』(新潮新書)がある。
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