「党内調整力」の欠如を露呈したトランプ政権

足立正彦
執筆者:足立正彦 2017年3月29日
エリア: 北米
ライアン下院議長の指導力も低下か (C)EPA=時事

 ドナルド・トランプ大統領が政権発足直後から最優先課題として取り組んできた、医療保険制度改革法(通称、オバマケア)を撤廃し、置き換えることを目的としたオバマケア代替案である「米国医療保険法案」を、トランプ政権と下院共和党指導部は3月24日の下院本会議での採決直前に撤回し、採決を断念する状況に追い込まれた。ちょうど前日の3月23日は7年前にオバマ政権の内政面での「レガシー(業績)」の1つであるオバマケアが成立したまさにその日であった。オバマケア成立直後から共和党はオバマケアを撤廃に追い込むことが党内の求心力を高めるエネルギーとなっていた。実際、今年1月3日に召集された第115議会では、共和党が多数党の立場にある上下両院でオバマケア撤廃決議が共和党議員の賛成多数で可決された。大統領選挙キャンペーン期間中からオバマケア撤廃論を繰り返し有権者に訴えてきたトランプ大統領自身にとっても、就任直後の最初の大統領令署名はオバマケア撤廃手続きに関するものであった。
 第115議会でも共和党が第114議会に引き続き上下両院でそれぞれ多数党の立場を維持するとともに、1月20日にはトランプ政権が発足し、オバマ前政権3年目から6年間続いてきた「分断政治」に終止符が打たれ、大統領も上下両院のそれぞれの多数党もすべて同一政党が支配する政治環境へと大きく変化した。そうした中、トランプ政権と議会共和党にとり最優先課題に位置付けられていたオバマケア撤廃は確実視されていた。だが、実際にはそうはならず、今年3月6日に下院共和党指導部主導で起草され、下院に提出されたオバマケア代替案を可決できないという最悪の事態にトランプ政権は陥った。

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執筆者プロフィール
足立正彦 米州住友商事ワシントン事務所 シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から現職。
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