このたび、『フォーサイト』編集部からのお誘いを受け、かなり躊躇したのだけれども、「専門家の部屋」への参加を決めた。
躊躇の理由はいくつかある。なによりも、頻繁に情報発信をするような研究の仕方を、元来はしていないことがある。私の中東を見る姿勢は、原則としては、社会の規範・思想の長期的な変化を見守り、それが政治にどのような影響を与えていくか見届けていくことに尽きる。1日単位どころか1カ月単位での動きも、本来ならそうめったにないはずだ。
「元来は」「原則としては」「本来なら」と重ねたのは、今年になって表面化したアラブ諸国の政治変動が、思想レベルでの長期的変動が、政権や体制の変動、日々の政変や内戦といった短期・中期的な帰結に目の前で次々に結びついていくという、例外的な事態を生じさせているからだ。今年の1月末から5月にかけて、連載「中東―危機の震源を読む」でリアルタイムに多数の分析を公開し続けたのは、あくまでも対象が現実に動いてきたからである。
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