ブックハンティング・クラシックス (67)

「有吉佐和子」「三島由紀夫」を徹底批判した「真意」(後編)

執筆者:佐瀬昌盛 2016年2月5日
エリア: アジア
 

 猪木正道氏の『国を守る』は別著『安全を考える』よりも早く出版された。その冒頭の論考「『国を守る』とはどういうことか」は、「作家の有吉佐和子さん」の興味深いインタヴュー記事からの引用で始まっている。それは、昭和47年8月の朝日新聞に連載された『私のにっぽん改造論』初回に登場した有吉発言を紹介するものだった。猪木氏はそれを読んで「大いに驚き、この小さな本を書く決心を固め」た、という。

 世は庶民宰相・田中角栄氏の時代。わが国は繁栄していたけれども、「公害」「老人問題」「教育問題」といった難題も抱えていた。だから有吉さんは、「日本の将来を考えたら、お茶もノドを通りません」とか、それら難題には「なにひとつとして解決の見通しはないと思います」と嘆いている。では、それら難題に対する御明答はないのだろうか。それら社会問題には十分な国家予算が配分されない。ならば、どうすべきか。有吉さんはいとも明快に答える。「やれることはただひとつ。総理大臣が日本の永世中立宣言をなさることです」「そして総理大臣がテレビカメラの前に立って、世界に向って、日本の永世中立を宣言してしまうんです。そうすればすべては解決すると思います」

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執筆者プロフィール
佐瀬昌盛(させまさもり) 防衛大学校名誉教授。1934年生れ。東京大学大学院修了。成蹊大学助教授、防衛大学校教授、拓殖大学海外事情研究所所長などを歴任。『NATO―21世紀からの世界戦略』(文春新書)、『集団的自衛権―論争のために』(PHP新書)など著書多数。
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