「君主号」の世界史 (22)

「日本国王」

執筆者:岡本隆司 2019年1月26日
タグ: 中国 日本
エリア: アジア
足利義満は、「日本国王源道義」の称号を明の皇帝から得た
 

 前回に論じたところをまとめてみると、日本人は「皇」「王」という漢語概念を同義とはいわないまでも、互いにかけ離れた意味内容をもつものとして意識しなかった。そうした無差別の語感は、国内的に君臣の別をはっきり分かつ機能があったと同時に、対外的には主観であれ、中国との対等を意識できる作用を果たしていた。

消えゆく「天皇」

 そうはいっても、「皇」にせよ「王」にせよ、外来語の君主号であることに変わりはない。あくまで外向けのいかめしい、そもそも日本人になじみにくい表記である。中国・漢語との関わりから生まれてきたものだから、現実に中国との関係、あるいはその意識が希薄になっていけば、そうした字句そのものを使わない方向に転じても、不思議ではない。とりわけ「天皇」号がそうだった。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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