「レッドライン」越えた金正恩のICBM「正面突破戦略」(上)

執筆者:平井久志 2022年4月1日
エリア: アジア 北米
ICBM発射を報じた『朝鮮中央テレビ』の動画は、「往年のハリウッド映画を思わせる」と評された(『労働新聞』HPより、以下同)

 

3月24日に北朝鮮が発射したミサイルは、米本土まで届くであろうその性能と、堂々と「ICBM」を名乗ったという2つの点で世界を驚かせた。これまでのカモフラージュから正面突破戦略に転じた北朝鮮の真意を分析する。

 北朝鮮は3月24日午後2時33分ごろ、平壌の順安飛行場から大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる飛翔体を発射した。日本政府は、この飛翔体は1時間以上飛行し、同3時44分ごろ、北海道・渡島半島の西約150キロにある日本海の排他的経済水域(EEZ)内に落下した、とした。

 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は翌3月25日、1面から4面までを費やし、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が「火星砲-17」(以下は「火星17」と表記)型の試験発射の断行を命じ、これに成功したことを28枚の写真を掲載して報じた。金党総書記は命令書に、

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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