世界貿易システムを襲う“爆売り中国”の衝撃

Foresight World Watcher's 4Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年3月30日
タグ: 中国 EU 権威主義
中国の景気浮揚策は輸出頼み[中国・重慶市の物流拠点に並ぶ輸出用のEV=2023年9月](C)時事

 今週もお疲れ様でした。トランプ氏が米大統領になった場合、世界の貿易体制が受けるダメージについては様々な考察がなされています。自称“タリフマン(関税男)”は先日もメキシコで生産された中国車に「100%の関税を課す」と表明、メキシコとの貿易協定(USMCA=米国・メキシコ・カナダ協定)など知ったことかというところでしょうが、貿易体制の行方についてはもう一つ見逃せない論点があります。中国です。

 中国の李強首相は全人代開幕初日の3月5日、政府活動報告要旨の中で中国経済の現状について、「有効需要が不足し、一部産業の生産能力が過剰で、成長期待が相対的に低い」と語っています。過剰生産の一方で政策的に工業生産能力増強を進める姿勢は明らかな矛盾を孕んでいますが、中国にとっては対米競争に勝たねばならぬという事情もあるでしょう。

 さりとて国内は需要不足。結果、溢れるモノは国外市場を目指します。すでにEV(電気自動車)輸出をめぐる軋轢が欧州で顕著になっていますし、4月に予定されるイエレン米財務長官の訪中も中国の生産能力増強問題がメインテーマと目されます。対中貿易に「壁」を高くしようとしているのは西側先進国に限りません。ブラジル、インド、南アメリカなどにもアンチダンピングの動きは広がっていることを英エコノミスト誌は伝えますす。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい海外メディア記事4本、皆様もよろしければご一緒に。

The triple shock facing Europe's economy【Economist/3月27日付】

「ダイナミズムで知られる存在ではないとはいえ、欧州は今、あらゆる観点から見て停滞している。2022年のロシアによるウクライナ侵攻に続くエネルギー・ショックで疲弊した欧州連合(EU)経済は、過去10年の成長率が米国の8%に対してわずか4%であり、22年末以降はEUも英国も経済が拡大していない」
「欧州の不幸は起きたタイミングが悪かった。大陸欧州は防衛――米国のウクライナ支援が枯渇してからはなおさらだ――とエネルギーのグリーン化目標の達成とを支えるため、強い成長を必要としている。有権者は苛立ちを募らせ、『ドイツのための選択肢』のような極右政党を支持するようになりつつある。そして長年にわたり成長の足を引っ張ってきた要因――急速な高齢化、頑強な規制、不十分な市場統合――は消え去っていない」

 英「エコノミスト」誌は3月27日付の「欧州経済が直面するトリプルショック」でEUおよび英国の経済の現状および先行きの困難さを厳しく指摘している。記事は、(1)中国からの安価な輸入品の急増に直面していること、(2)ドナルド・トランプが政権を奪還し、欧州の輸出品に高率の関税をかける可能性があることを懸念し、それぞれについて次のように補足する。……

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カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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