「2024年問題」で岐路に立つ農産物流「火急の課題」

執筆者:窪田新之助 2024年4月8日
エリア: アジア
輸送時間がかかっても鮮度を保てる「コールドチェーン」の構築も欠かせない[真空予冷機へ運ばれるニンジンが入った段ボール箱=2018年7月30日、北海道河東郡音更町](C)時事通信フォト
我々が季節や土地を問わずに様々な食材を味わえるのは、物流の発達によるところが大きい。地元で生産がない野菜や果物でも、物流業者が遠隔地から野菜や果物を安定して届けてくれる。食卓に彩りがもたらされるのは、物流網が整ったおかげだ。しかし「2024年問題」で、そんな当たり前と思われてきた日常に影が差している。

 働き方改革関連法に伴う労働基準法の改正により、物流業界ではこの4月から年間の時間外労働時間の上限が960時間、月平均して80時間に規制された。さらにトラックドライバーの連続運転は4時間を限度とし、直後に30分以上の休憩を取ることも義務化される。時間外労働の上限規制に違反すれば、「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科せられる。これによって生じるさまざまな問題が「2024年問題」である。

 もとより成り手が減っていたトラックドライバーの不足には拍車がかかる。公益社団法人鉄道貨物協会の本部委員会がまとめた報告書「モーダルシフトで子供たちに明るい未来を」(2019年5月)によると、全産業におけるドライバーの不足は25年度には約21万人、28年度には約28万人となる予想だ。

「3日目販売」が困難に

 とりわけ農業の物流現場では、人手によって荷物の積み下ろしをする手荷役が多い。農産物を集荷して選別や調製をした後に一時保管しておく農業関連施設では、いまだにパレットを使わず、紙袋や段ボールのままで置いておくことはざらである。ドライバーがそれらを一つひとつトラックに載せる「バラ積み」をしているので、時間も労力もかかる。

 たとえばコメの包装で一般的な30キロの紙袋を12トン車に隙間なく積み込む場合、その回数は約400回に及ぶ。それだけ、その日のうちに輸送できる距離も短くなる。

 これまではドライバーの時間外労働時間に制約がなかったので、少なくとも産地にとってはそれで問題はなかった。ただ、4月以降はそうもいかなくなる。とくにあせりを感じているのが、大消費地から遠い九州と沖縄、北海道の産地だ。……

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
窪田新之助(くぼたしんのすけ) ジャーナリスト 1978年、福岡県生まれ。明治大学文学部を卒業後、日本農業新聞に入社。 記者として国内外で農政や農業生産の現場を取材し、2012年よりフリーに。2014年、米国務省の招待でカリフォルニア州などの農業現場を訪れる。 著書に『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』(共に講談社+α新書)、『データ農業が日本を救う』(インターナショナル新書)、『農協の闇 』(講談社現代新書)、『誰が農業を殺すのか』(共著、新潮新書)、『人口減少時代の農業と食』 (ちくま新書)などがある。ご意見や情報のご提供は、以下のアドレスまでご連絡ください。shinkubo1207★gmail.com(★は@に書き換えてください)
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top