秋のオペラシーズンが開幕して以来、フランスのストライキに悩まされ続けている。先月、リヨン国立歌劇場管弦楽団とともに、夫がパリ公演をしたが、その夜にサルコジ政権の年金改革法案に反対して、交通機関がストライキに入った。コンサート開始は20時。ストライキ開始は19時。オーケストラの団員は午前中にリヨンからパリに移動していたために、演奏会は無事に終わったが、翌日の帰りの新幹線(TGV)は、2本に1本の間引き運転。買っていたチケットを次の列車に変えるなど、劇場側はストライキに振り回された。 しかし、こうなると乗客も国鉄も「スト慣れ」してくる。国鉄のウェブサイトには、運休する列車が随時アップされ、問い合わせれば列車の運行状況を乗客の携帯メールに送ってくれる。ここまでサービスするぐらいなら、普通に運行したほうが簡単なのではと思うが、労働組合にとっては「スト権の主張」が大切らしい。 サルコジ政権は年金赤字の解消のため、公的年金の支給開始年齢を、60歳から62歳に引き上げることを柱にした年金改革法案を下院で通した。上院で可決されれば、年金開始年齢は、毎年4カ月ずつ引き上げられ、1956年生まれの人は、2018年に62歳から支給開始されることになる。これに反対するストライキは、9月7日、23日、10月2日とすでに3回行われ、デモに参加した人は組合側の発表によると、数百万人にのぼる。 この原稿を書いている最中に、労働組合から4度目のストライキ決行が発表された。次回は10月12日。交通機関や病院関係者、公務員などの組合が同調を呼び掛けている。この日はよりによって、夫が毎晩遅くまで練習しているオペラ公演の初日。予定どおり12日に幕を開けてしまうと、観客の出足に影響し、劇場内部にも労組に同調する者が出て、舞台に差し支えるかもしれない。そう判断して劇場側は12日の公演を諦め、翌日を初日にすると発表した。
- 24時間
- 1週間
- f
- 1 NS1供給削減、サハリン2大統領令――牙を剥くロシア「エネルギー武器化」戦略
- 2 「2022年にも出生数80万人割れ」の衝撃――政府予測より20年前倒しの少子化をくい止めるには「異次元子育て支援」が必要だ
-
3
仮想通貨下落が北朝鮮の“窃盗資産”を脅かす
-
4
キッシンジャーがダボスで語った新たなウクライナの「正統性」と欧州の「均衡」(上)
-
5
キッシンジャーがダボスで語った新たなウクライナの「正統性」と欧州の「均衡」(下)
-
6
イエメン紛争:停戦の行方を握る「フーシー派抑止」の集団指導体制
-
7
【Exclusive】バイデン「移民保護強化」の欠陥を顕わにした誘拐事件
- 8 与野党より「岸田・安倍」の火花が散る参院選
- 9 スペースX「スターリンク」がウクライナで証明した宇宙・サイバー・電子戦での実力
-
10
日本アカデミアがコロナ研究をできない憂うべき実態と、その敵