中国の「戦略的辺境」戦略について(下)

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2011年1月17日

中国の戦略的辺境という概念について書いてきました。

最近、「第一列島線」や「第二列島線」という言葉をよく日本の中国報道でみかけます。第一列島線は、東シナ海から南シナ海にかけて、沖縄から台湾、フィリピンに至る地理的概念上の「ライン」のことです。第二列島線は西太平洋の小笠原諸島からグアムに至るラインのことです。「中国はこの第一列島線を越えて、第二列島線までの海洋進出を目指している」と言われています。

この用語を私もあまり考えずに使っていましたが、このように書くことによって、まるで中国が新たな領土・領海を獲得したいかのような印象を与えている気もします。しかし、そうではありません。では、中国は何を考えているのでしょうか。

戦略的辺境という概念に基づいて考えれば、よく分かるはずです。中国は自らの戦略的辺境について、現在は中国沿岸部海域に過ぎなかったものを、できるだけ拡大していこうと考えているのです。戦略的辺境は領土ではなく、影響力を行使し得る地域・海域・空域という風に考えていいでしょう。人民解放軍少将・徐光裕は論文でこの海洋戦略を漢字九文字で表しています。「保近岸、争近海、出遠洋」。日本語に訳すまでもありませんね。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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