「原子力災害対策本部」はどこにいった?

原英史
執筆者:原英史 2011年3月24日
エリア: 日本

 

当サイトで、塩谷喜雄氏が20日、「原子力安全委員会はどこへいった?」という記事を書かれているが、その後23日になってようやく、同委員会の班目春樹委員長が記者会見を実施。
24日には、菅総理が班目委員長に対し、「水や野菜に影響が広がっている中でしっかりと役割を」「安全委員会と原子力安全・保安院との連携を強化してほしい」と指示したという。
 
市民生活への影響が広がっている中、班目委員長以下の原子力安全委員会には、科学的知見を持つ専門家として、安全確保のため確実な対策と、正確で分かりやすい情報開示・広報に全力をあげてほしい。
 
その上で、ひとつコメントしておきたいが、今ごろになって「安全委員会と原子力安全・保安院との連携を・・」などと言われては困る。
こういう緊急事態で、役所の縦割り組織が連携なく活動したり、調整に手間取っていたりする暇はない。
だからこそ、「原子力災害対策特別措置法」では、緊急事態には「原子力災害対策本部」を設け、内閣総理大臣の下で一元的に対策を進めることになっている。
対策本部長(内閣総理大臣)には、緊急対処のため、各省職員、自治体の首長、電力会社に指示を行うなど、強力な権限も認められている(原子力災害対策特別措置法20条)。
 
今回も、震災当日の11日、「原子力災害対策本部」が設置されたのだが、どうなっているのか。
開催状況をみると、事態の深刻化が明らかになってきた14日以降、なぜか開催頻度が下がり、14~23日までの間にわずか5回しか開催されていないようだ(原子力安全委員会ホームページより)。
しかも、 別途15日には東京電力との「事故対策統合本部」が設置されるなど、指揮命令系統が一元化されているのかも疑問だ。
 
本来ならば、「原子力災害対策本部」のオペレーションルームに、本部長たる総理(または、その代理として権限を任された閣僚など)が座り、横に、原子力安全委員会、原子力安全・保安院その他関係機関の責任者を常駐させて、常時、重要案件はそこで決定したらよいはずだ。
 
今頃になって「現場同士で連携を」などと言っても、現場ではなかなかうまくいかない。
そんなことを言う必要がある状況なのであれば、直ちに、「原子力災害対策本部」をまともに機能させてもらわないと困る。
 
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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