日本は「有機的知的財産輸出モデル」を目指せ

執筆者:小幡績 2011年5月13日
エリア: 日本

 日本経済はどう変わるのか。
 変わらないところと変わるところがあるだろう。
 様々なシンクタンクやエコノミスト、証券会社などの日本経済見通しは、震災で本質的に日本経済の成長見通しが変わるわけではないとしている。つまり、震災のダメージで東北では経済活動が停滞、東京圏でも計画停電などの影響とムードの変化により消費は萎縮、生産面ではサプライチェーンのダメージで輸出も生産も一時的に急減する。しかし、これらは一時的で、計画停電などを含め電力需給マネイジメントが成功し、夏の電力供給がある程度確保されれば、夏あるいは秋から経済は回復。その後、復興需要が出てくるので、消費の反動増とともに、急速に回復。トータルでは、2011年はマイナスかもしれないが、2012年はむしろ震災の影響はプラスといったところだ。
 この議論は、日本経済のベース、基本構造はダメージを受けない。一時的には需要の波が生じるという捉え方だ。
 本当だろうか。
 一方、評論家を中心に経済を数字で語らない人々は、日本は変わった、社会が変わったという。日本を1つに、と芸能人も道端の少年少女たちも言う。ボランティアも義捐金も大ブームだ。日本はこの試練を乗り越え、もっと良くなるという。
 政策提言をする人々もそうだ。この機会に、復旧ではなく復興を。新しい日本の形をこの際作り上げるべきだ。道州制を、遷都を。官僚の縦割りをなくし、規制を一気に緩和せよ。はたまた増税、消費税アップ。この際、ついでに年金のための財源も確保して、復興が終わったらさらなる消費税アップで一連の絵を描いてしまえ。復興需要があるから財政再建を進めないと。
 いずれも素晴らしく革新的な創造的破壊だ。これまで出来なかった改革をこの際実現してしまえというもので、復興そのものはどこへやら、普段の自己の主張を実現する絶好の場として利用している。
 いずれにせよ、数字の議論も感覚的な議論も政策提言も前向きだ。この前向きさはどこから来ているのだろうか。

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執筆者プロフィール
小幡績 1967年、千葉県生れ。東京大学経済学部卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省し、99年退職。2001年、ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。2003年より現職。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。単著に『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、共著に『ニッポン再建論』(廣済堂新書)などがある。
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