世界華商大会(WORLD CHINESE ENTREPRENEURS CONVENTION)の第1 回大会は、1991年にシンガポールで開催された。呼び掛け人のリー・クワンユー(李光耀)は中華文化を共有する世界中の華人企業家に相互扶助と協力を説く一方、その成功経験を中国市場に注入して、天安門事件で頓挫しかけた中国の開放路線を後押しし、中国社会の安定的発展を呼び掛けた。彼は、これを「自然演変」と呼んだ。
これに対し北京は、華人資本の投資は歓迎したものの自然演変には猛反発する。それというのもリーが掲げた自然演変が、共産党独裁体制に変化を強いると看做したからだ。一方、華人の投資が中国経済の発展を促し軍事的脅威をもたらすと看做したインドネシア治安当局は、華人と中国市場の結びつきに強い不快感を表明していた。かくして世界華商大会は軌道修正を迫られ、第2回香港大会(93年)では中国ではなく自らの居住国への投資を呼び掛けることとなる。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン