リック・サントラムの挑戦

執筆者:足立正彦 2012年1月10日
エリア: 北米

 今月3日に行なわれたアイオワ州党員集会でリック・サントラム元上院議員(ペンシルベニア州)は30007票(得票率24.5%)を獲得し、勝利したミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事に僅か8票差に迫る大健闘となった。サントラムは、イタリアから米国に移民として渡ってきた祖父がかつて働いていたペンシルベニア州西部の炭鉱近くで、昨年6月に共和党大統領候補指名獲得争いへの出馬を正式に表明した。しかし、出馬表明後、サントラムの支持率は常に1桁台前半で推移し、主要メディアからも殆ど注目されない「泡沫候補扱い」を強いられていた。だが、サントラムはメディアに大々的に取り上げられず、政治資金も集まらない中でも靴の底を擦り減らしながらアイオワ州各地を訪れて自らの政策を有権者に訴え続けるなど地道な選挙キャンペーンを続けていた。アイオワ州党員集会の数日前に有権者が自ら支持すべき候補について真剣に検討して最終判断を下す中、アイオワ州の福音派キリスト教の指導者らの支持を受けたサントラムは社会的保守層の間で支持を急速に広げ、アイオワ州党員集会でロムニーと事実上互角に渡り合い、共和党系ストラテジストや米国の政治専門家の間でも驚きをもって受け止められた。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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