政治をゼロから考える
政治をゼロから考える(3)

日本に2大政党制は合わない?

宇野重規
執筆者:宇野重規 2012年8月13日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

質問 「日本の2大政党制は失敗だったのでしょうか。イギリスではなぜ2大政党制が続いているのですか?」


 質問をいただきました。要旨部分だけを抜粋すると、「イギリスの長い議院内閣制の歴史を見ると、2大政党制が続いた理由は何だろうかと思います。イギリス議会政治史のなかに、何らかの処方箋があるのでしょうか」とあります。
 たしかに日本の政治を見ていると、「2大政党制」へのかけ声も空しく、またぞろ政界再編の話が出てきました。いったいどれだけ有権者が辛抱すれば、日本にも「2大政党制」なるものが確立するのでしょうか。「そもそも日本に、2大政党制は合わないのだ」という意見もしばしば耳にしますが、無理もないと思います。

世界的にも珍しい成功事例

 とはいえ、日本にも「2大政党制」が実現した時期がなかったわけではありません。戦前のことになりますが、大正の末期から昭和の初期にかけて、立憲政友会と立憲民政党(前身は憲政会)から交互に首相が選ばれました。それ以前の藩閥主導の時代と、それ以後の軍の台頭時代に挟まれた9年間のことでした。
 この時期に首相になった浜口雄幸や犬養毅といった政治家や、政友会と民政党の政策的志向の違い(中国などへの対外政策や財政政策において、両党には明確な違いがありました)などを見ると、それなりに「立派な」2大政党制であったといえるかもしれません。
 それと比べると、戦後の自民党と社会党、あるいは自民党と新進党の場合などは、「2大政党制の確立」とまでは言えそうにありません(社会党はついに単独で自民党から政権を奪えませんでしたし、新進党はそもそもあまりに短命でした)。現在の自民党と民主党についても、先行きは不透明です。
 いずれにせよ、日本の場合、「2大政党制」の歴史がないわけではありませんが、例外的な一時期に限られるといえるでしょう(だから日本には2大政党制は合わないととるか、むしろ重要な例外があるととるかは、議論のわかれるところです)。
 世界的に見ても、英米などのアングロサクソン諸国をのぞくと、長期にわたって2大政党制が安定的に続いた事例は多くありません。その意味からすると、2大政党制というのは、なかなか難しいもののようです。小選挙区制を導入すれば、自動的に2大政党制が確立するというわけではありません。
 そうだとすると、イギリスやアメリカでは、なぜ2大政党制が長く続いているのか、そちらの方が不思議であるというべきかもしれません。とくに歴史上はじめて2大政党制を確立したイギリスにいったいどのような秘密があったのか。ちょっと知りたくなるのは無理からぬところでしょう。

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執筆者プロフィール
宇野重規
宇野重規 1967年生れ。1996年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。著書に『政治哲学へ―現代フランスとの対話』(東京大学出版会、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン特別賞)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社、サントリー学芸賞)、『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書)、共編著に『希望学[1]』『希望学[4]』(ともに東京大学出版会)などがある。
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