破滅前夜

執筆者:白戸圭一 2012年9月27日
エリア: アフリカ

 長期にわたる経済の低迷。巨額の政府債務。失業の増加。長期に及ぶ一党支配の終焉後、国民と無縁なところで権力闘争を続ける政治家たち。体制寄りの政治メディア。閉塞感を他者への攻撃で解消する社会の風潮。国民の期待を集める扇動型政治指導者の登場。ナショナリズムの高揚と排外主義の台頭。近隣国との関係悪化......これは西アフリカ・コートジボワール共和国の1990年代の状況である。

 今から10年前の2002年9月19日、コートジボワールで内戦が勃発した。かつて「象牙の奇跡」と言われる経済発展を謳歌した同国は南北に分断され、国民生活は崩壊した。内戦の始まりは北部を拠点とする離反兵士750人の武装蜂起であり、同国の内情を知らぬ外国人にとって、それは突然の出来事に見えた。だが、内戦は冒頭に述べたような政治・経済・社会状況の帰結であった。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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