北朝鮮にとっての「金正男」とは――繰り返し流れる「亡命説」「暗殺指令説」

平井久志
執筆者:平井久志 2013年1月22日
エリア: 朝鮮半島

 昨年12月19日の韓国大統領選挙の直前に、韓国人の知人から「金正男(キム・ジョンナム)氏に関する日本での最近の情報はないか」と問い合わせがあった。

 そんな質問をしてきた理由を尋ねると、投票日を前に「金正男氏が密かに韓国に亡命していてソウルで会見をする」「韓国の放送局が金正男氏とインタビューに成功した。投票日直前に放映される」といった噂が韓国のネットを中心に出回っているという。

 しかし、韓国大統領選挙を前にそうしたことは起きず、すべてが根拠のない噂であった。

 この騒ぎは韓国大統領選が終わると、一過性の虚報として終わろうとしているが、北朝鮮にとって金正男氏とはどういう存在なのだろうか。

 

三代世襲批判で「潜伏」へ

 金正男氏は2001年5月に成田空港で妻子とみられる人たちとともに偽造旅券を使った疑いで拘束され、北京に強制退去処分になった。金正男氏はその後、マカオや北京を生活の根拠地にしてきた。最近では北京よりもマカオを生活拠点としていた。時々、海外のメディアの前に姿を現し、インタビューに応じるなどした。

 しかし、昨年1月に日本で金正男氏のインタビューとeメールをまとめた「父・金正日と私」という本が出版されて以降、その行方は分からなくなった。金正男氏は「北朝鮮の政権が、私に危害をもたらす可能性もあります」と指摘し、この時点でのこの本の出版に反対していた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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