石油を最大の「政治的武器」にしたプーチン政権

執筆者:五十嵐卓 2004年10月号
エリア: ロシア

油価高値誘導で採掘コストの高さをカバーする――。「価格安定」を目指すサウジ中心に動いてきた原油市場は、ロシアという新たな爆弾を抱え込んだ。「彼はとても賢明だ」。八月二十三日、テキサス州クロフォードの別邸に滞在していたブッシュ大統領はプーチン・ロシア大統領との電話会談後、上機嫌だった。プーチン大統領が原油を増産し、原油市況の押し下げに協力する姿勢を示したからだ。 電話会談の前週にはニューヨーク市場のWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油は一時、一バレル=四九ドル四〇セントまで上昇、世界は「五〇ドル原油」の悪夢におびえた。全米平均のガソリン価格は一ガロン=二ドル台に乗り、一人あたりのガソリン消費量が世界でずば抜けて多い米国社会に重くのしかかっていた。大統領選挙を十一月に控えたブッシュ大統領にとって、原油価格の押し下げは緊急の課題だった。 だが、八月に原油が急騰した最大の要因はブッシュ大統領が評価したプーチン大統領自らが作り出したものといえる。ロシア最大の石油会社、ユコスを破綻の瀬戸際まで追い詰め、ロシアの原油輸出の大幅減少という不安を世界に与えたからだ。八月下旬になってロシアの原油輸出量低下の不安はやや収まり、ベネズエラの国民投票でチャベス大統領の罷免が否決されたことやサウジアラビアなどの増産表明もあって、WTI原油は四〇ドル台前半まで下落した。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順