インテリジェンス・ナウ
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アラファトが築き上げた複雑なる情報機関の行く末

春名幹男
執筆者:春名幹男 2005年1月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 故アラファト・パレスチナ自治政府議長ほど毀誉褒貶の激しいカリスマは今の世界にいない。パレスチナ解放の政治家との称賛の一方で、血で汚れたテロリストとも非難されている。 テロ闘争や護身の術は、米国の魔術師フーディーニのようでもあり、米中ソの情報機関を相手に動き回った故野坂参三元日本共産党議長を彷彿とさせる側面もある。アラファトという人物は、情報と金を自分に集中した旧世代の革命家であり、民主主義的な行政組織とは無縁の人間だったのだ。 議長とは一九九三年九月ワシントンでの会見の際、握手したことがある。ホワイトハウスで行なわれた「パレスチナ暫定自治宣言」の調印式の翌日のことだった。調印式では「軍服」とクフィーヤ(頭巾)を脱ぐのではないか、とも予測されたが、結局死ぬまで、公式の場では軍人の服装で通した。 出生から死因まで、ナゾだらけの人物がパレスチナ解放闘争をリードできた秘密は、情報と金だ。アラファト氏が築いた情報・治安ネットワークは、金脈と同様、複雑怪奇だ。 アラファト氏本人が実は「KGB(ソ連国家保安委員会)の秘密工作員」との説を元ルーマニア情報局(DIE)副長官、イオン・ミハイ・パセパ氏が指摘していることは二〇〇三年十一月号の本欄で紹介した。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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