【フォーサイトノンフィクション】 なぜフェルメールの「真贋」は逆転したのか

執筆者:関亜矢子 2005年2月号
カテゴリ: 文化・歴史

オークションにかけられたオランダの巨匠フェルメールの絵は、一度はニセモノとされたものだった。いかなるプロセスをたどって、その絵が高額で競り落とされることになったのか。気鋭のライターによるレポート。 十二億円あたりまでは、七人が競り合っていた。ロンドンのニューボンドストリート、かの有名なサザビーズのオークションだ。そこから先は二人の争いになった。ひとりはオランダの絵画ディーラー、ヌートマン氏。もうひとりは代理人を立てた謎の人物。言い値はおよそ二億円単位で跳ね上がっていく。二人以外は声を上げることができない。「カーン!」――延々と続いた競りの末、オークショナーのハンマーが勢いよく振り下ろされた時、落札価格の掲示板には一千六百二十万ポンドと表示されていた。邦貨にして約三十三億円。オランダの巨匠フェルメールの絵とはいえ、「オールド・マスター」と呼ばれる大家たちの作品の中でも史上三位という破格の値段だった。しかもそれは、一度は贋作だといわれた絵だったのだ。 落札したのは、謎の人物の方だった。予想された価格の六倍もの値段でこの絵を手中にしたのは誰なのか。さまざまな憶測が湧いたのも当然だ。それが美術館なら、落札後に情報が公開されるだろう。結局、個人のバイヤー、しかも「トロフィーハンター」だろうという噂になっていく。トロフィーハンターとは、ある特定の画家や時代が好きでその作品を集めるのではなく、とにかく世界でいちばん手に入りにくいもの、珍しいものを集めようとする人たちである。そのために投じる金額は、常人には想像のできない単位なのだ。

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