「スィースィー将軍のブリュメール18日」を待ちながら

池内恵
執筆者:池内恵 2013年7月4日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 厳密にはエジプト軍が設定した「48時間」の期限が過ぎたが、もちろんムルスィー大統領側が退陣する様子はない。衝突を避けるべく最後の折衝が行われているものとみられる。一時は、現地時間4時30分の期限が過ぎたら即座にスィースィー国防相の声明が国営放送で流されるという噂が流れ、タハリール広場近辺の放送局の要員や大統領直属の護衛隊を退去させたという話が広まったが、結局否定されている。しかし軍が放送局を囲んでいることは確かなようだ。

 デモを組織した「反乱(Tamarrod-Rebel)」は手回しよく、現地時間4時31分に、政府系『アハラーム』紙のサイトに声明を報じさせた。「反乱運動はエジプト人に『街路と広場に直ちに出て、軍の声明を聞け』と呼びかけ:軍が民衆の側につくことを確信」とのこと。

 しかし軍はここにきて「いつ声明を出すとも決めていない」と報道官のツイッター・アカウントから声明を出している。マスコミを通じて強硬策の予想・期待を高めてきたが、最終段階で軍首脳が集まり、対応を協議しているようだ。また、軍は否定しているが、国防省内で、「反乱」運動の代表者やバラダイ前IAEA事務総長、イスラーム教学の最高峰アズハル総長やコプト教の大司教を交え、ムスリム同胞団やサラフ主義の代表者と共に、工程表を議論していると報じられている。軍はクーデタという形を極力避けたいようであり、ムスリム同胞団はなおも粘って起死回生を図る様子だ。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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