「『干しメンタイ』(不可侵)で『クジラ』(核放棄)を釣ろうとする米国」

平井久志
執筆者:平井久志 2013年10月15日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障

 北朝鮮の国防委員会スポークスマンは10月12日「米国が心から朝米関係の改善に関心があるならば対朝鮮敵視政策から撤回するべきだ」と題した声明を発表した。この声明はケリー米国務長官が日米両政府の外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)後の共同会見で発言した不可侵に関する発言内容を批判したものであった。

 声明は「この日、ケリーはわれわれが非核化を先に始めれば米国は対話を行なう準備ができており、われわれの非核化開始が確かであればわれわれと平和的な関係も結び、不可侵条約も締結すると生意気に言いふらした」と指摘した。

 その上でケリー発言は「米国式の破廉恥さと狡猾さの極みだ」と批判し、「われわれが核兵器を下ろして素手になれというのは、わが軍隊と人民に対する耐え難い愚弄、冒涜だ」と主張し、核兵器放棄の要求を拒否した。

 北朝鮮はこの上で「米国が朝鮮との関係改善を望むなら、対朝鮮敵視政策を放棄し、全ての対朝鮮制裁を撤回すべきだ」とし、まず米国の敵視政策放棄、制裁解除が先行すべきであると主張した。

 北朝鮮もまたケリー発言を重要視し、国防委スポークスマン声明という形で反応してきたわけだ。

 北朝鮮の声明は、時々、面白い表現を使う。今回は「こんにち、米国が見せている行動は奇妙にも、クジラを釣ろうと干しメンタイ餌を持って慌てふためく無知で哀れな釣り人の境遇を彷彿させている。 米国が提案した対話や狡猾な不可侵に隠された釣り針を見分けられないわが軍隊と人民ではない」とした。「不可侵」という干しメンタイのような餌で「核放棄」というクジラは渡さず、「不可侵」の中に隠された釣り針の存在を知っているという論評だ。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
逆張りの思考
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順