ナノテクに復権を賭ける繊維 3 海水を真水に変える「顕微鏡でも見えない穴」

執筆者:船木春仁 2005年11月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 福岡市は、全国でも類のない「一級河川を持たない大都市」だ。そのために自己水源の確保は歴史的な課題で、同市の上水道事業が始まった一九二三年以来、これまで一八回もの水源拡張事業が展開されてきた。 それでも、降水量のうち蒸発せず、河川水や地下水として水資源となる水量の目安を示す「人口一人当たり水資源賦存量」は、全国平均の三分の一にすぎず、渇水の不安は消えない。そこで、一九回事業で渇水対策の切り札として登場したのが海水を淡水に変える造水プラントだった。 福岡市中心部から北に一〇キロほどの通称「海の中道」。ここで今年六月から「海の中道奈多海水淡水化センター」が本格稼働を始めた。淡水の供給量(造水量)は一日五万トン。福岡都市圏で使われる水の一割、二五万人分の使用量に相当する。海水から淡水を得る割合である生産水回収率は六〇%。造水容量、回収率ともに国内最大・最高の最新鋭プラントだ。 プラントの内部には細長い筒が何段にも積み重ねられていて、その風景はまるで砲弾の収納庫のようである。筒の数は二〇〇〇本。汲み上げられた海水は、この筒の中で淡水と濃縮海水になる。淡水は浄水場へ回り、濃縮海水は希薄化作業を経て海へ戻される。

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