【ブックハンティング】古今東西の失敗を解明した「自分が当事者なら」の視点

執筆者:畑村洋太郎 2006年1月号
カテゴリ: 書評

 拙著『失敗学のすすめ』が好評を博して五年以上経ち、失敗学は世間でも認知されてきたと思う。とはいえ、失敗から学ぶとはどういうことか、腑に落ちない読者も多いのではないか。 私が提唱してきた失敗学とは、失敗を生んだ原因とカラクリを発見し、新しいカラクリの設計に生かすこと。元は工学設計からの発想で、実験器具の水漏れなど身近なミスから原発・宇宙事故までも対象にして、エンジニアが犯してしまった設計や対処の失敗例を分析することから始まった。 失敗に学ぶコツは、他人事として失敗を見るのではなく、「自分もやるかもしれない」と当事者感覚で理解することが肝心だ。自分が体験したミスは経験知として身につく。では、今後自分が失敗を避けるために必要な知識は何なのか。 本書『失敗百選』はそんな疑問に答えてくれる一冊だ。著者の中尾政之・東京大学大学院教授は、タイタニック号沈没やJR福知山線の脱線事故など機械工学に関わる失敗事例を百七十八件に厳選する。さらに要因ごとに分類することで、覚えておくべき必要最低限の知識を四十一項目とした。わずかこれだけの基礎知識で古今東西の膨大な失敗のメカニズムが解明できることになる。その構成は大胆で見事だ。

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