タイ政治「混迷の歴史」から見える解決への難題

樋泉克夫
 インラック首相「失職」に猛抗議するタクシン派の集会 (C)AFP=時事
インラック首相「失職」に猛抗議するタクシン派の集会 (C)AFP=時事

 5月7日、タイの憲法裁判所が、3年前の政府高官人事に関して公務員人事への不当介入を禁じた憲法に違反したと判断したことから、インラック首相に加え、同人事に直接関与したとされる9人の閣僚が失職した。インラック政権は首相代行を立て、7月後半に予定されている総選挙に持ち込むことで態勢の挽回を目指す姿勢だが、情況は極めて厳しい。

 苦境に陥ったインラック前首相に追い討ちをかけるのが、国家汚職防止取締委員会の動きだろう。8日、同委員会は、インラック政権が政策の柱であり農民対策の要と定めて進めて来た農民からのモミの買い上げ制度に関し、(1)職務怠慢、(2)汚職、(3)国家財政に損失を与えた――等を理由に、上院に対して弾劾請求することを決定した。

 憲法裁判所の判断、国家汚職防止取締委員会の動きが、昨年秋から政府官庁占拠やバンコク主要道路封鎖などの激しい街頭行動を繰り返して来た反政府陣営に追い風となったことは言うまでもない。勢いづいた反政府陣営のトップであるステープ元副首相は、「主権はタイ国民に帰属する」(憲法第3条)ことを根拠に、知識人・財界人で構成する「人民評議会」を設立し、選挙制度を含む全面的な政治改革の断行を訴えている。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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