饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(101)

曖昧な関係を象徴した米中“懸案棚上げ”のランチ

西川恵
執筆者:西川恵 2006年6月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾 北米

 中国の胡錦濤国家主席が四月十八日から二十一日まで米国を訪問し、ブッシュ米大統領と首脳会談を行なった。この首脳会談はもともとは昨年九月に予定されていたが、ハリケーン「カトリーナ」被害と重なったため米側の要請で延期され、今回はその仕切り直しだった。 ただ当初から、訪問の性格について米中間の認識は食い違っていた。中国が国賓訪問にこだわったのに対し、ブッシュ大統領はテキサス州クロフォードにある私邸兼牧場での会談を望んだ。米中間の政治、経済、安全保障をめぐる数々の懸案について、サシでじっくり話し合いたいと考えたからだ。しかし守勢に立たされるのを嫌った胡主席はこれを拒否した。 米国はホワイトハウスでの会談には同意したが、国賓訪問ではなく公式訪問と位置づけた。国賓訪問は最高の儀礼と尊敬をもって外国元首を歓迎する儀式性の強い訪問だが、国賓訪問とするには米中は懸案を抱えすぎていると米国は考えた。 しかし中国はクリントン大統領時代の一九九七年、江沢民主席が国賓訪問したことを盾にこだわった。米国に国賓として迎えられることで存在感を高めたい思惑もあっただろう。結局、中国は国賓訪問と呼び、米国は公式訪問と称し、それぞれ都合よく解釈することで落ち着いた。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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