インテリジェンス・ナウ
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年次報告書を発表する新型テロ組織――イラクの破綻国家化で対米攻撃の危機も

春名幹男
執筆者:春名幹男 2014年6月25日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東 北米
 6月23日、バグダッドで会談したケリー米国務長官(左)とイラクのマリキ首相 (C)AFP=時事
6月23日、バグダッドで会談したケリー米国務長官(左)とイラクのマリキ首相 (C)AFP=時事

 イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」。またたく間に、イラク北部にある第2の都市モスル(人口約145万人、首都バグダッドは約600万人)やフセイン元大統領の生地ティクリットなどを制圧、首都攻撃も懸念される事態となった。

 中央情報局(CIA)などの米情報機関が全く予測できなかった事態で、米国にとって「クリミア」に続く大失態となった。

 オバマ大統領は昨年5月、米国防大学での演説で「世界規模の対テロ戦争」は事実上終了し、米本土攻撃を目指す組織の動向に焦点を当てて注視すると言明した。

 当面、イスラム教シーア派住民が圧倒的に多いバグダッドや南部油田地帯が占領される心配はあまりないとみられる。しかし、大規模な米軍地上部隊が投入される見通しは全くない。イラクが内戦状態に陥って、破綻国家となるような事態になれば、ISISが米本土をテロ攻撃する恐れがある、と一部専門家の間で指摘されている。

 

テロの成果を数値化

 今年3月に発表された報告書で示された作戦別回数を示すインフォグラフィック (C)米シンクタンク「戦争研究所」
今年3月に発表された報告書で示された作戦別回数を示すインフォグラフィック (C)米シンクタンク「戦争研究所」

 ISISは、イラク戦争中の2004年にバグダッドで日本人青年、香田証生さんを殺害した「イラク聖戦アル・カエダ組織」などが形成したといわれる「イラク・イスラム国」が前身。シリア内戦に介入して軍事力をつけ、2013年春にその存在が知られるようになった。残忍なテロ行為をめぐり同じアル・カエダ系組織「ヌスラ戦線」と対立、アル・カエダ中枢のザワヒリ容疑者も非難して、事実上「破門」された。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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