饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(111)

「女人禁制」に戻ってしまったイランの外交団招待式典

西川恵
執筆者:西川恵 2007年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 イラン革命記念日(二月十一日)前日の十日、テヘランでは外交団の長を招いて、イラン政府主催のナショナルデーの式典が催された。 会場は首都テヘランの中心街にあるイスラム諸国会議機構(OIC)会議場。定刻の午後二時、黒塗りの外交ナンバーの車が次々と車寄せに到着した。各国大使は外務省儀典官に控えの間に案内され、そこでソフトドリンクとカナペのサービスを受けながらしばし歓談した。 今年は昨年までと違って華やかさに欠けていた。というのはカップルで招待されていた昨年までと異なり、大使単独の男性だけの招待となったからだ。 一九七九年の革命後、イラン政府はそれまでパーレビ国王の誕生日(十月二十六日)と定められていたナショナルデーを革命記念日に変更し、式典の内容も大きく変えた。 パーレビ時代は王宮でワイン、シャンパンなどのアルコール類に、ペルシア料理やフランス料理などの豪華な食事が振る舞われた。何百畳敷きかと思わせるようなペルシア絨毯を踏みしめて、きらびやかなドレス姿の王妃や王族、大使夫人たちが、開放された王宮の続きの間を行き来し、歓談した。 しかし革命後は大統領の一方的演説で終わるそっけないものになり、夫人は招かれなくなった。「堕落した西側の文化やプロトコール(儀典)のしきたり」と決別し、「女性は公的行事に参加しない」「不特定多数の男女が親しく言葉を交わしてはならない」というイスラム教の戒律を厳格に適用したのだ。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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