インテリジェンス・ナウ
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あまりにドロドロした政治が絡むスパイ実名漏洩事件の舞台裏

春名幹男
執筆者:春名幹男 2007年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 一種奇妙な裁判だった。評決後、被告側も反ブッシュ陣営も、そして陪審員までが不満を漏らした。チェイニー副大統領の元首席補佐官、ルイス・リビー被告(五六)が有罪評決を受けた、米中央情報局(CIA)工作員名漏洩事件の裁判のことだ。 陪審員の一人、ワシントン・ポスト紙の元記者デニス・コリンズ氏は閉廷後、記者団に囲まれ「私たち陪審員はリビー氏のことを裁いたわけではない、と願っている。ひどい裁判だった」と怒りを露にした。 実はリビー氏は、ボスのチェイニー副大統領のために「生けにえにされた」(チャールズ・シューマー上院議員=民主党)とみられているのだ。“本丸”はやはり、副大統領なのである。チェイニー副大統領は、民主党が多数を握る米議会で矢面に立たされることになるだろう。 この裁判では、ホワイトハウスの舞台裏の政治と情報をめぐる暗闘の一部が、「証拠」の形で、白日の下に晒された。例えば、二〇〇三年七月六日付のニューヨーク・タイムズ紙の切り抜き。記事の欄外に副大統領の走り書きがある。「彼の妻は彼を官費旅行させたのかね」という副大統領らしい皮肉だ。「彼の妻」とはCIAの元美人スパイ、バレリー・プレーム・ウィルソンさん。そして「彼」とは彼女の夫、ジョセフ・ウィルソン元駐ガボン大使のことだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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