日本の賃金・雇用に負うトヨタの「社会的責任」

執筆者:山内桂也 2009年5月号
カテゴリ: 経済・ビジネス 金融

「日本一の企業」「世界一の自動車会社」には負うべき責任がある。「逃げ足日本一」でいいのか。 パーティを組み、シェルパ(案内役)を先頭に山頂を目指す。分岐点に差し掛かるごとに「こっちの道の方が早く安全に着ける」との言葉を信じて付いていったところ、にわかに激しい突風に襲われた。シェルパは命綱でつながったパーティの仲間を次から次へと巻き添えにしながら谷底へ滑落。悪天候が過ぎ去るのを待つうちに皆が体力を消耗していく中、最も余力があったのはシェルパだった――。 いまや、日本の景気は戦後最悪水準に落ち込んでいる。この原稿では、日本経済のシェルパ役、トヨタの「二つの罪」を問う。     * 日本経済の崩落を告げた二〇〇八年の「トヨタショック」。実は、この言葉が最初に使われたのは今から七年前のことである。 〇二年三月十三日、トヨタ自動車は日本経営者団体連盟(日経連)会長を務める奥田碩会長(当時)の号令下、ベースアップ(ベア)ゼロで春闘を決着させた。〇二年三月期の連結決算で日本企業初となる経常利益一兆円を達成するトヨタは、その年、過去最高益を更新する好業績が見込まれていた。 春闘相場はトヨタがつくる。トヨタの春闘は他社より早く決着するケースが多く、決着するや、自動車業界はもちろん製鉄や電機など業界を越えて結果が伝えられる。各社の労使交渉は、それを基準に最終的な落としどころを探るのだ。〇二年三月、誰もが賃上げを予想したトヨタがベアゼロ決着したことで、日本全体の賃金抑制の流れは決まった。これが、最初のトヨタショックである。

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