【ブックハンティング】日系移民が身を以て示した「児孫のために美田を買はず」

執筆者:草生亜紀子 2009年5月号
カテゴリ: 書評 社会
エリア: 日本

 胡蝶蘭を栽培するには「隔離室」が欠かせないという。ずっと温室で育った胡蝶蘭は葉を伸ばすばかりで花芽が出ない。いったん温室から出して、室温二十度前後の「肌寒い」隔離室に一時期置くことで、茎が花芽分化するのだそうだ。 一九六一年、二十五歳の時に、ポケットに一万円札一枚を入れて奈良県から米カリフォルニア州に渡り、菊とバラの栽培で成功し、さらに六十三歳から始めた胡蝶蘭の生産で世界一の生産量を誇る「蘭の帝王」となった移民一世のアンディー・マツイ氏。そのマツイ夫妻の子育ての極意は、まさに子供を温室から追い出すことだった。 マツイ氏の次女であるキャシー・松井氏の著書『子供にマネーゲームを教えてはいけない』のメッセージは、つまるところ「子孫のために美田を残さず」。極めて古典的な教訓である。 本の中身を素直にタイトルにすれば、『大切なことはみんな日系移民の両親から教わった』なのだが、それでは本の売れ行きが限られたものになるかもしれない。 マネーゲームの総本山である米投資銀行大手ゴールドマン・サックスのマネージング・ディレクターである筆者が「マネーゲームを教えるな」と訴えることに鼻白む向きもあるだろうが、だからこそ目を引く。そこは「多くの人に読んでもらうための方便」と理解したい。

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