憂鬱な新世界・特別編 経済と市場への重荷となる「トロントの置き土産」

執筆者:小田博利 2010年7月9日
エリア: ヨーロッパ 北米

 2020年までの温暖化ガス排出25%削減を、どこかの国の首相が高らかに宣言してから1年も経たないのに、その首相はもう政権の座にいない。後任首相は初の国政選挙に追われている。就任早々、消費税率の引き上げを提起した菅直人首相である。
 選挙一色になるなか、すでに忘れられているだろうが、菅首相の発言は日本国内だけに向けてなされたものではない。就任後、半月余りで参加したカナダ・トロントでの主要8カ国(G8)と20カ国・地域(G20)の首脳会議(サミット)のテーマこそが、財政再建だったのだ。
 このサミットの首脳宣言はとんでもない置き土産を残した。主要国は2013年までに毎年の財政赤字を半減し、16年までに政府債務残高の国内総生産(GDP)比を安定ないし減少させるというものだ。米国、ブラジルなどの慎重論を欧州勢が押し切り、首脳宣言に数値目標を盛り込んだ。政府債務残高のGDP比が200%に迫る日本は、この数値目標をそのまま飲めば沈没してしまう。
 一計を案じた財務省は、日本には例外措置を認めるよう交渉して、宣言のなかに滑り込ませた。サミット直前に発表したばかりの財政運営戦略を「歓迎する」との文言を滑り込ませたのだ。財政運営戦略では2020年度までに国と地方の基礎的収支を均衡させると謳っている。目標通りにいったとしても、政府債務残高のGDP比の増加が止まるのは20年度ということになる。

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