社会保障に「乗っ取られる」来年度予算

執筆者:鈴木亘 2010年9月3日
エリア: 日本

 来年度(2011年度)の予算編成作業が混乱を極めている。7月27日に閣議決定された概算要求基準が、巨大な「社会保障関係費」とその自然増を聖域とする一方、その他の予算を1割削るという前代未聞の編成方針をとったためである。この「強い社会保障」にこだわった無理な編成方針と、民主党政権の悲惨なほどに低い政策遂行能力を考え合わせると、年末までに2011年度予算が組み終わらないという懸念が、現実のものになる可能性がある。

今年度と変わらぬ借金漬け

 既に、今年度(2010年度)予算自体、信じがたい内容であったことは周知の通りである。すなわち、子ども手当などのマニフェスト実現のために、過去最大の規模に膨れ上がった一般会計92.3兆円のうち、税収(租税及び印紙収入)で財源を調達できた分はわずか37.4兆円に過ぎず、国債発行による借金(公債金)が44.3兆円にも上った。しかも、埋蔵金の取り崩しによる「その他収入」も、恒常的に存在する収入ではなく、一種の借金に他ならないことを考えれば、実質的に55兆円近い借金を行なって組んだ予算であったと言えよう(図表・歳入総額の内訳)。

一般会計予算
一般会計予算

 この借金によって賄った財源の使途は、何といっても「社会保障関係費」がダントツに大きい27.3兆円という規模となっており、借金の返済や利払い費である「国債費」が20.6兆円、地方への財源分配である「地方交付税交付金等」が17.5兆円と続いている。一方で、以前は無駄の温床として悪名高かった公共事業関係費や防衛関係費であるが、既に大幅に削減されてきており、今年度は、それぞれ5.8兆円、4.8兆円にまで切り詰められている(図表・歳出総額の内訳)。
 この状況が来年度、どのように変わるのであろうか。まず、歳入であるが、国債発行による借金(公債金)は、今年度並みの44.3兆円以内に収めることが既に閣議決定されている。また、歳出についても、国債費等を除いた「一般歳出」を今年度並みの71兆円に収めることがやはり閣議決定されている。
 しかし、これらは、現在の財政赤字を減少させるための方針ではなく、ましてや、GDP(国内総生産)の2倍に達しようとしている危機的な政府債務を減少させるものでもないことに注意が必要である。実は、今年度行なった信じがたい大盤振る舞い予算を継続するためのルールに過ぎないのであり、今年度同様、来年度も政府債務が急速に膨張し続けることに何ら変わりは無い。

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執筆者プロフィール
鈴木亘 1970年生れ。上智大学経済学部卒。日本銀行勤務。大阪大学大学院修了(経済学博士)。大阪大学社会経済研究所、日本経済研究センター、東京学芸大学を経て、2009年4月より現職。規制改革会議専門委員(保育担当)。主著に『生活保護の経済分析』(共著、東京大学出版会、第51回日経・経済図書文化賞)、『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、第9回日経BP・BizTech図書賞)がある。
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