インタレスト・オブ・ジャスティス 堀田力『壁を破って進め』

執筆者:船橋洋一 2000年7月号
カテゴリ: 文化・歴史 書評

 一九七六年三月十二日午後、法務省刑事局参事官(後に東京地検特捜部検事)堀田力は安原美穂法務省刑事局長とともに、官邸に三木武夫首相を訪ねた。 その一月ちょっと前、米上院外交委員会の多国籍企業小委員会(チャーチ委員長)の公聴会に喚問されたロッキード社のA. C. コーチャン社長が、同社の日本への民間機、トライスター機売り込みに際し、日本側に多額の賄賂を贈ったと証言した。それに関連して、日本政府高官にもカネが渡ったのではないかとの疑惑が、浮上した。 日本国内は騒然となった。国会、マスコミは政府に対して真相究明を要求した。三木首相は、ジェリー・フォード米大統領あてに、公開を前提に資料の提供を要請する親書を送った。 その日、フォードの返書が届いた。 資料の公開はせず、捜査のために用いるという条件で、司法省・法務省の取り決めを結び、それに従って日本側に渡すという内容だった。 三木は苦い顔をして、ソファに座っていた。「どうしてああいう返事になったのかね」 のっけから皮肉な質問である。「さあ、それは外務省の方からお聞きとりいただきたいのですが」と安原も、皮肉な返事をした。「きみらがこちらに寄こせと言ったんだろう」

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