132円80銭

執筆者:伊藤洋一 2000年9月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 九九年一月に、ユーロが正式に欧州を代表する通貨になった時の対円相場である。執筆の九月六日時点では九三円台にある。三〇%の下げだ。円を持つ日本の旅行者が欧州に行って、「安い」と感じるのは当然である。 旅行者は得をしても、日本の機関投資家が対欧州投資で被った損失は膨大だ。なぜ下げ続けるのか。ティートマイヤー前ドイツ連銀総裁などは、アメリカとの成長率格差を語る。アメリカの方が成長率が高いからだという説明である。しかし、これでは成長率がはるかに低い日本の円が対ドルで水準を保っていることを説明できない。むしろ背景にあるのは欧州からの資本流出、それにEUという寄せ集めの国家連合のガバナビリティー(統治可能性)の問題だ。 欧州企業による米企業の買収額は今年一―七月だけで二〇兆円(発表ベース)。文化的にも言葉にも障害は少ない。加えて高い労働市場の流動性と、規制の少ない市場がアメリカにはある。欧州企業の米企業買収は「欧州によるアメリカの再植民地化」とも言える状況だ。そうした需給面での要因を政治的な要因が加速している。国家連合の枢要ポストを巡る各国間の争いから、EUのガバナビリティーが問題視されているのだ。来年に北の欧州の国々にとっては異質なギリシャが加われば、それは一層際立つだろう。

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