インテリジェンス・ナウ
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ブッシュ陣営の“モグラ”はどちらの味方だったのか

春名幹男
執筆者:春名幹男 2001年9月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

「わが国の政府システムはすべて自由選挙に依拠している。大統領選挙の妨害や大陪審での偽証は許されない」――米テキサス州オースティン連邦地裁のサム・スパークス判事は八月三十一日、そう被告人をたしなめ、禁固一年、罰金三千ドルを言い渡した。 これで、米国の一部メディアで、「ブッシュ選対に潜り込んだモウル(モグラ、敵陣営に潜入するスパイ)」「ディベートゲート事件」などと騒がれた不可解な事件はあっけない幕切れとなった。アリ・フライシャー米大統領報道官も「最も傷付き、失望したのはブッシュ陣営だった」と簡単な声明を発表、一件落着させたかに見える。 ところが、被告のフアニタ・イベット・ロザノ(三一)だけは、涙をこらえながら「どの選挙も苦しい思い出を残すだけだわ」と意味深長なコメントを残したのである。 本当のところは、動機、背後関係など興味津々のナゾを残したままなのだ。 事件が表面化したのはちょうど一年前の九月十三日のこと。民主党大統領候補、ゴア副大統領陣営の幹部、トム・ダウニー元下院議員のワシントン事務所に郵便小包が速達で送られてきた。ダウニー氏が包みを開けると、文書とビデオテープが出てきた。 百二十ページ強の「コミュニケーションブック」と題する文書は、ブッシュ陣営がまとめた選挙戦略、討論用の参考ファクト類・ポイント、反論の技術――といった内容。ビデオは約六十分で、ブッシュ氏が行なった討論の練習風景を撮したもの。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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