「遺伝子テスト」がCMで流される時代

執筆者:ルイーズ・ブランソン 2002年12月号
カテゴリ: IT・メディア 国際
エリア: 北米

将来、癌やアルツハイマーになるかどうか――遺伝子テストで自分の未来をある程度知ることができる時代になった。「乳ガン遺伝子」のテストがテレビコマーシャルに登場する一方で、企業が従業員の遺伝子情報を悪用する恐れもでている。[ワシントン発]アメリカでは昔から、テレビをつければ薬の宣伝が流れていた。ゾカー、クラリネックス、ミランタ――ペプシやバーガーキングの新製品に混じって、高コレステロールから水虫、尿失禁の治療薬までが新CMの列に連なる。そして今、さらなる展開が見えてきた。公共の電波を通じて、遺伝子テストの猛烈な売り込みが始まったのだ。 ミリアッド・ジェネティックス社のCMには、女性が次々に登場しては身の上話を語る。「うちでは母も叔母も乳ガンで亡くなり、姉も乳ガンと診断されました。もしも、あなた自身やお友達がそういう家系なら、ぜひお耳に入れたいことがあります」。まだ発病してはいないが、自分もいつそうなるかわからない。そうした不安に怯える人々の心に、製薬会社は訴えかけるのだ。 遺伝子テストのCMは、新たな時代の到来を告げている。昨年、人間の遺伝子の青写真である「ヒトゲノム」の解析が終了したのを受けて予想される、医薬の革命。病気の予知に限らず治療においても、遺伝子工学に寄せられる期待は大きいが、そこには新たなジレンマも生まれる。次の十年には、最も深刻な社会問題の一つとなるに違いない。それはアメリカにとどまらず、日本をはじめ、他の先進国にとっても傍観者ではいられない問題だ。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
ルイーズ・ブランソン イギリス出身。英『サンデー・タイムズ』紙モスクワ支局長を経てフリーランスに。米『ワシントン・ポスト』紙元モスクワ支局長で夫のダスコ・ドーダー氏との共著に『ミハイル・ゴルバチョフ』『ミロシェビッチ――暴君のポートレイト』がある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順