北朝鮮「ミサイル発射」の衝撃(下)総参謀長も処刑「恐怖政治」続く

平井久志
執筆者:平井久志 2016年2月23日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 朝鮮半島
朝鮮中央通信が2015年10月15日に公開した写真に収まる北朝鮮の李永吉総参謀長とみられる軍人(左)と金正恩第1書記 (C)AFP=時事

 朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は2月9日に、光明星4号の打ち上げ成功を祝う平壌市軍民慶祝大会が2月8日に市民、軍人約15万人が参加して行われたと報じた。同紙は、この報道の中で、この大会に参加した幹部を「金永南(キム・ヨンナム)、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)、朴奉珠(パク・ポンジュ)、金己男(キム・ギナム)、崔泰福(チェ・テボク)、朴永植(パク・ヨンシク)、李明秀(リ・ミョンス)、楊亨燮(ヤン・ヒョンソプ)、金元弘(キム・ウォンホン)、金英哲(キム・ヨンチョル)、郭範基(クァク・ボムギ)、呉秀容(オ・スヨン)、金平海(キム・ピョンヘ)、盧斗哲(ロ・ドゥチョル)、趙然俊(チョ・ヨンジュン)、金永大(キム・ヨンデ)」の順番で報じた。

李永吉総参謀長も処刑か

 北朝鮮ウォッチャーはこの出席者名を見て奇異な感じを受けた。党政治局常務委員の金永南最高人民会議常任委員長、黄炳瑞軍総政治局長、党政治局員の中で上位幹部の朴奉珠党書記、金己男党書記、崔泰福党書記までは順当だった。その後に軍幹部の名前が来るのも通常だが、朴永植人民武力部長に続いて、李永吉(リ・ヨンギル)総参謀長の名前がなく、引退したはずの李明秀大将になっていたからだ。
 北朝鮮軍部のトップ3のポストは軍総政治局長、人民武力部長、総参謀長だ。通常、李明秀氏の名前があった序列には総参謀長の名前があるはずだ。李永吉総参謀長が解任され、李明秀大将がカムバックして総参謀長に就任した可能性が出てきた。そして、北朝鮮の各メディアは2月21日、金正恩第1書記が軍の訓練を視察したことを報じる中で、李明秀氏を「朝鮮人民軍総参謀長で陸軍大将の李明秀同志」と紹介し、李明秀氏が軍総参謀長に就任したことを確認した。
 韓国の聯合ニュースは上記の大会が報じられた翌日の2月10日、複数の対北消息筋の話として、2月初めに李永吉総参謀長が「宗派分子および勢道・不正容疑」で処刑されたことが明らかになったと報じた。韓国の各メディアも一斉に同じように報じた。おそらく、ニュースソースは情報機関の国家情報院筋であろう。
 昨年5月ごろに粛清、処刑された玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長に次ぐ粛清、処刑である。金正恩第1書記は昨年秋ごろから、更迭した幹部を復帰させたり、階級を降格させた軍幹部を元の階級に戻したりするなど権力安定化の傾向をみせていた。しかし、李永吉総参謀長の処刑が事実なら、金正恩第1書記が依然として「恐怖統治」を続けているということになる。

執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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