朝鮮労働党大会「設計図なき戴冠式」(3)
注目の「新外交ライン」

平井久志
執筆者:平井久志 2016年5月19日
エリア: 朝鮮半島

 第7回党大会は4日目の5月9日に最終議案である人事案件を処理した。党大会前に、この大会を通じて北朝鮮指導部が大幅な世代交代を実施するのではという見方もあったが、党核心部分での世代交代は部分的なもので、老壮の調和を重視したものとなった。
 筆者は第7回党大会の世代交代は党組織の下部構造でのものであり、経験や実績が必要な党政治局など核心指導部での世代交代は部分的なものであると考えた。
 金正恩(キム・ジョンウン)氏はなぜ党代表者会でなく、党大会開催を決めたのかという問いかけの1つの答えがここにある。党大会では党組織の末端から代議員を選び、最終的に約3000人の代議員を選出した。各地方、各職場単位、軍の党組織の末端から活動総括を行い、代議員を選出し、また上部の党代表者会で代議員が選ばれてきた。党の末端組織では大幅な世代交代が進行したと考える。今回、党中央委員、党中央委員候補の計235人が改選された。韓国統一部によると、このうち約129人が新人で、世代交代は中央委員レベルまでは実施された。しかし、党政治局や党中央軍事委員会での世代交代は部分的だった。
 金正恩氏は今年2月、李永吉(リ・ヨンギル)総参謀長の更迭に伴い、後任の総参謀長に現在82歳の李明秀(リ・ミョンス)大将を起用した。李明秀大将は朴在京(パク・チェギョン)、玄哲海(ヒョン・チョレ)両氏と並んで金正日(キム・ジョンイル)総書記の現地指導に頻繁に同行した軍人3人組の1人だ。いったん、軍の一線を退いたとみられていた李明秀大将を戦闘部門のトップである総参謀長に起用した人事をみると、5月の党大会で指導部の大幅な世代交代を断行するとは思えなかった。
 また、朝鮮労働党と国防委員会は4月14日付決定で、軍長老の金永春(キム・ヨンチュン)元国防副委員長と玄哲海元人民武力部第1副部長に軍元帥の称号を、李明秀総参謀長に軍次帥の称号をそれぞれ授与した。この動きも老幹部への配慮であり、それは党大会の人事にもつながるものとみられた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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