「短命」に終わりそうな外務省「杉山次官体制」

2016年6月7日
エリア: アジア

 日本外交の今年最大の外交イベントだった伊勢志摩サミットとオバマ米大統領の広島訪問を経て、外務省は3年間にわたり同省を束ねてきた斎木昭隆事務次官(1976年入省、以下同じ)の退任と、杉山晋輔外務審議官(77年)の次官就任を軸とする人事を固めた。本命視された秋葉剛男総合外交政策局長(82年)は政治担当外務審議官に就任する。ただ、杉山次官は短命政権で、1年で交代し、秋葉次官体制に移行するとの見方が霞が関で流れている。

駐米大使人事など焦点

 新人事では、長嶺安政外務審議官(77年)が駐韓大使に転出し、片上慶一EU代表部大使(80年)が後任となる。斎木次官は佐々江賢一郎駐米大使(74年)の後任とみられていたが、本人は周辺に「民間に出たい」と漏らしており、当面佐々江大使は続投のようだ。しかし、駐米大使は伝統的に米国の政権交代とともに代わるケースが多く、新政権登場を待って斎木氏が起用される可能性が強いとみられる。
 局長ポストのトップである総合外交政策局長には、金杉憲治経済局長(83年)らの名が挙がっているが、将来の次官ポスト含みだけに、官邸の意向も絡み、なお流動的だ。石兼公博アジア大洋州局長(81年)ら局長の多くは昨年就任しただけに、続投するようだ。
 その意味でも、杉山体制は暫定的で、来年、秋葉次官誕生を待って局長らも大幅に刷新される可能性がある。
 斎木体制以降、外務省人事で気がかりなのは、アメリカン・スクールが主要ポストを牛耳っていることだ。斎木、杉山、秋葉各氏、それに北米局長、アジア大洋州局長、欧州局長、国際法局長など主要局長ポストはアメリカン・スクールが掌握している。かつてはロシア・スクールが欧州局長、チャイナ・スクールがアジア大洋州局長を務めたこともあるが、司令塔となる局長ポストが同一スクールの偏重人事となることで、発想が画一化し、重層的な外交ができなくなる恐れがあろう。 

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