北朝鮮「SLBM」発射成功(下)「次は原潜建造」が及ぼす波紋

平井久志
執筆者:平井久志 2016年9月2日
8月25日に朝鮮中央通信が配信した、軍人たちとともに歓喜する金正恩氏の写真。前日のSLBM発射実験成功時のものとされる (c)AFP=時事

 北朝鮮では8月25日は軍事優先路線を掲げる「先軍節」の日だ。「労働新聞」など北朝鮮に主要メディアは金正日(キム・ジョンイル)総書記が1960年8月25日に金日成(キム・イルソン)主席とともに朝鮮人民軍ソウル柳京第105戦車師団を訪問したことで白頭山から始まった朝鮮革命の銃剣重視の歴史と勝利の伝統がしっかりつながったなどとキャンペーンを展開した。SLBMの発射事件の成功は「先軍節」への祝砲であった。

国内へ成果を誇示

 また北朝鮮では27~28日に北朝鮮で最大の大衆組織である金日成社会主義青年同盟(今回の大会で組織名を「金日成・金正日主義青年同盟」と改称)が23年ぶりに大会を開催した。SLBM発射実験の成功は、先軍や青年重視を掲げる金正恩(キム・ジョンウン)政権にとっては、こうした国内行事への成果誇示でもあった。
 駐英北朝鮮大使館のテ・ヨンホ公使などの亡命による国内の動揺を打ち消すためとかいう見方があるが、SLBM開発はずっと継続してきたもので、直接的な関係はないと考えるべきだろう。SLBM発射実験のあった8月24日には東京で、日本では5年5カ月ぶりとなる日中韓外相会談が開かれた。様々な懸案を抱える3国で、協調よりは対立や立場の差が浮き彫りになる会談になりかねない状況だったが、北朝鮮がSLBMを発射したために対北朝鮮対応での協調を打ち出すことが出来た。皮肉な話である。北朝鮮がこの日中韓外相会談を意識してSLBM発射実験をしたのであれば、中国が北朝鮮対応で日韓と協調しないためにも、この会談が終わった25日にやった方が北朝鮮にはメリットがあっただろう。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
comment:2
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順